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「そんな風に向こうに勝手に話を進められたのはさ、確かに俺の対応が下手だったせいもあるんだ。でもその都度で、謝ったり、正直になろうともして来てるんだけどね」
「ふーん。」
「えと…だから、代案て言うのも、そういうつもりなんだ。
あの時生徒会長と居る時にサワグチと会ったのはたまたまだけど、でもやっぱり、良くなかったって事なんだな…多分」
「……」
「サワグチ。ちょっと」
笹岡は背を向けて横になっている怜の腕を掴んで揺り動かしている。
「何」
「聞いてる?」
「聞いてるよ」
「うん。だからね、俺、告白はしないって言ったんだ。だってまだ、話とかも何もしていないのに、相手が良いって言う筈がないと思ったんだよ。
…しかも俺、女に興味ない奴だしさ。あいつもそれ分かってるから、俺に恥かいて欲しくて無理難題言い出してずっとゴネてたんだよ。」
「ふーん。それで、どうにかなったの」
「まあ、今はね。」
「……」
「お前さ、ここまで言われておいて、意味わかりませんって言う訳じゃないよな。」
「……え。」
しばし、互いに黙り込み、部屋の外がしいんと静まり返る薄い暗闇の中に居る。
「だからさ、俺誰にでもしてるわけじゃないから。」
「なにが」
「だから。お前言ってたろ、ダシにするとかわけわからない事」
笹岡が、怜の背中越しに視線を送っているのが分かる。が、怜はなんて言えばいいのか分からず、自分がさっきから囚われている考えについて口にする。
「…代案てなに」
「え。」
「それが、最初にあのトイレでしてた事?」
「…」
はあ、と怜はため息を吐き、振り返って笹岡の方を見る。
身体を起こしかけた怜と、俯いたままの笹岡で暫し、じーっと互いに見合って居たが、どうしても込み上げて来るものを我慢出来ずに、怜は言ってしまう。「なんでそんな、キモチ悪い事すんの?」
「…仕方ないだろ。
別に俺も、あいつが嫌いだった訳じゃないし、何も考えないでやってる訳じゃないから」
「何だそれ…よく分かんない」
「分からない?」
「うん。そんな事する必要無いでしょ。」
「必要、か…ふーん。サワグチはそうやって考えてるんだ。
でもさ、その場にたった一人で置かれてみないと分からない事もあるんじゃない?」
笹岡は怜の顔を見下ろしたままでそう言う。
「…例えば、それを一生別に言えなくても良いって思ってるくらいの気持ちだったら?言ってもどうせ、相手には伝わらないんだからって最初から諦めて、別のことで気を紛らわせて、何かで補って生きている奴だって居るんだよ。
それを無理やり、こじ開けて…それも、元は仲良かった奴から。」
「…」
「俺はさ、確かに馬鹿みたいだったかも知んないけど、あの時はあいつに勝たなきゃならなかったんだよ。俺は、何も失いたくなかった。本当は…」
笹岡は俯いたままで話す。怜はその顔を見上げながら、なんて言えば良いのかを考えている。
「今思えば、あいつは俺の事ただ傷付けたいだけだったんだ。俺の事、好きになってくれたのかも知れないけど、サワグチの言うように、そんな必要なんてなかったのかもな。」
笹岡はそう言った後で、顔を手で少しだけ覆う。もしかすると泣いているのかもしれなかったが、光の加減でそれはよく見えない。
「…じゃあ、それやってみてよ。」
「え?」
「その話で言っていた酷い事っていうの、俺にやってみて。それは人に出来るような事なの?」
自分でも、何を言っているのかよく分からなかったが、確かに笹岡の言う通りに怜は怒っていたのかもしれなかった。
流石に、笹岡も怜の顔を暫し真面目な顔で見つめている。「…いや、やっぱいい。
何だ俺…その生徒会長みたいな事になってんじゃん」
怜はそう言うと、話を聞くため少しだけ起こしてた身体をベッドに沈ませて、はあとため息を吐く。
「いや、別にいいよ。
…サワグチ。」
笹岡の方を見ると、怜が寝そべっている身体の方に腕を伸ばし間近に顔を近づけて来た。至近距離で暫し互いの顔を見た後で再び笹岡は起き上がると、足元の布団をまくって中に入り込んで来る。
笹岡は怜の身体のすぐ近くで体を伸ばす。すぐ隣に、暖かい身体の感触が感じられて怜はドキリとする。笹岡は、手で怜の肩をそっと掴む。
布団の中、互いの身体の感触も感じられる位置で抱きかかえられるような格好になった怜は、戸惑いながら、笹岡の顔を見上げる。
笹岡は真剣な顔で怜を見ている。それから、何か言おうとしたのかは分からないが、しばらくして目を瞑る。…怜の口に自分の唇を重ねた。暫しそうして居たが、笹岡の舌が、重なり合った自分達の口の間から入り込んで来る。
…何となく、でも怜は後悔しているかもしれなかった。ただ、不安を払拭したいだけだったんだ、そう思う。怒ってるわけでも、二人が何をしたのかを本当に知りたかったわけでもない。
ただ俺は、笹岡がいったい何を考えてるのか分からなかったから。だからわざわざ…嫌な事をさせてるんだ。
けどさっきとは違い薄暗い部屋の中で二人だけで抱き合ってるせいで否が応でもおかしな気分になって来ていた。
笹岡の方もそうだったのかもしれず、口を離し思わず息を漏らしたあとで「ごめん、」と呟く。「なにが」と怜が言おうとすると、笹岡は怜の身体へと手を伸ばし、それからズボンの辺りに向かってじょじょに手を下ろしていく。
「サワグチ、あのさ…」
「…」
「俺の事、変って思わないでね」
「うん」
笹岡は怜のズボンの上から◯◯スに触れると、ゆっくりと手を動かし始める。
怜は既に、硬くなりつつあったものに笹岡の手が当たり、それも何か勝手を知っているように動き始めたので気恥ずかしさとその刺激で、笹岡の腕を掴んでいた。
「…嫌だった?」
笹岡が、怜の耳に息が当たるような位置でそう囁く。