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第12話―― 「新たな風」
校内の桜が咲き誇る4月。
柳城高校野球部は、新しい年度を迎えた。
「小早川、いよいよ2年だな。下級生の面倒も見てもらうぞ」
城島監督の声に、小早川は力強くうなずいた。
秋の九州大会で敗れ、センバツ甲子園への道を絶たれた悔しさは、まだ胸に残っていた。
だがそれを乗り越えようと、彼は練習で人一倍声を張る。
グラウンドには新入生が集まっていた。
まだ幼さを残す顔つきだが、目は輝いていた。
「よし、今日から一緒に頑張ろう!」
小早川は先輩らしく声をかける。新入生たちの緊張が少しだけ和らいだ。
春の練習試合が始まると、柳城は冬を越してたくましくなった姿を見せ始めた。
1年生投手・河原の球速は上がり、小早川のリードも冴える。
だがまだ打線の繋がりに課題が多く、試合は接戦ばかり。
試合後、ベンチで城島監督が告げる。
「お前たちには、去年味わった悔しさがあるはずだ。それを忘れるな。夏にもう一度勝負だ」
選手たちは静かにうなずいた。
夏の頂点へ――新しい春が、確かに始まった。