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みき
543
#ざまぁ
寺町朱穂
145
魂審問庁の法廷は、いつもより暗かった。 まるで、被告の魂そのものが光を拒んでいるかのように。
白い霧が割れ、黒いコートの男が姿を現す。
黒羽 刻(くろば きざむ)・享年41。 裏社会で“影の処理者”と呼ばれた男。
だがその瞳は、以前よりも深く濁っていた。
裁判長が告げる。
「被告、黒羽刻。前へ」
刻はゆっくりと歩み出る。 その足取りは重く、影がまとわりつくようだった。
検事が口を開く。
「被告は生前、裏社会で暗躍し、 多くの人間の人生を壊してきた。 詳細は語れないが―― その魂は、長年“破壊”を糧にしていた。」
刻は薄く笑った。
「破壊? 俺はただ……必要とされた仕事をしただけだ」
裁判長が手を上げる。
「記憶映像を開示します」
光が広がる。 だがそこに映ったのは、 かつての“救いの行為”ではなかった。
・裏社会の抗争を煽る刻 ・弱者を利用し、情報を引き出す刻 ・自分の利益のために人を切り捨てる刻 ・“守るため”ではなく“支配するため”に動く刻 ・孤児院への寄付も、裏の取引の隠れ蓑だった事実
検事が冷たく言う。
「あなたの“善行”は、 すべて計算された偽善だった。 裏の世界での信用を得るための道具にすぎない。」
刻は肩をすくめた。
「善も悪も、使い方次第だ。 俺は……ただ生き残るために動いただけだ」
裁判長が問う。
「黒羽刻。 あなたは、自分の魂がどれほど黒く染まっているか理解しているか」
刻は静かに笑った。
「理解してるさ。 俺は光なんて求めてない。 影のままで十分だ」
その瞬間、法廷の空気が凍りついた。
裁判長は槌を高く掲げる。
「判決を言い渡す。
黒羽 刻――有罪。 魂は“深淵拘束領域”へ送還する。」
刻の笑みが消えた。
「……深淵拘束……? そこは……」
検事が淡々と告げる。
「光も闇もない。 欲望も、怒りも、快楽も、痛みもない。 “何も感じない空間”だ。 あなたのような魂にとって、最大の罰だろう。」
刻の顔が初めて歪んだ。
「……感情が……消える……? 俺は……影では……“感じて”いたかった……」
裁判長が槌を打つ。
「黒羽刻の魂は、ここに封印する」
足元に黒い裂け目が開き、 刻の身体がゆっくりと沈んでいく。
「待て……! 俺は……まだ…… 影の中で……!」
叫びは深淵に吸い込まれた。
裁判長が最後の槌を置く。
続く
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