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早朝、5時はクロノの成れの果ての彼との一夜から目覚める。5時が目覚めてやる事は彼を湯浴みに連れて行く事だった。昨夜の閨事で疲れ果て、全身噛み跡、汗だらけの彼を5時は抱き抱えて風呂場へ向かう。
風呂場の猫足浴槽に湯を張り、湯を張っている間、彼の体を洗い、湯が溜まってきたら、彼の肢体を湯に浸からせる。5時はどこかテキトーに固形の入浴剤を入れると、固形の入浴剤から泡がぶくぶく溢れてきた。どうやら泡風呂用の入浴剤だったらしい。自分が入るわけじゃないので、まあいいかと、5時は彼の長い髪を洗いにかかった。
バスタブ内に背もたれて淵に敷いたタオルを枕にして彼は浴槽に浸かり泡沫の中で眠る。
無限夢で霜髪に成り果てた彼の髪は5時の行き届いた手入れによってその美しさが保たれている。
5時は彼の髪型に長い髪を好んだ。彼の長い霜髪が綺麗で気に入ったからかもしれない。
入浴剤の泡からほのかに花の香りがした。
泡沫の中で揺蕩う彼は安らいでいる。
5時は泡だらけの髪にお湯をかけて流して行く。流れた泡は排水溝へ流れて消えて行く。
彼の命もまた、5時の手で消せる泡沫のようなものだ。
のぼせるといけないので5時は彼をバスタブから引き上げて身体中の泡をシャワーで流して行く。
肢体の噛み跡は青紫に変色し、5時の執着が色鮮やかに咲いている。
クロノの成れの果ての彼を引き取った時、最初は単なる性処理の相手として愛玩した。
手ひどく愛玩されても、彼は抵抗せず5時を受け入れた。5時もまたキンスケだと本能で察したのだろう。
ひどく抱いても抵抗せず受け入れる彼に5時は苛立ちを隠せなかった。徹底的にもう受け入れられないくらい凌辱してやろうと思った。
彼の食事に媚薬を混ぜ、ホトには玩具を付ける。5時が任務で不在の間、無限快楽に善がり苦しませる。彼の心を屈させようとした。
5時が任務から帰ると幼いキンスケがギロリと睨んできた
『あの人に何したんだよ。』
『別に。』
『あの人ずっと布団にくるまって苦しそうにしてたぞ。あの人に酷いことしたら許さないからな!』
幼いキンスケはそう言って去って行った。
部屋行くと、幼いキンスケの言った通り、彼は布団にくるまって震えていた。強引に布団を取ってみると、彼は顔を真っ赤にして媚薬の効能と玩具による無限快楽に耐えていた。
はぁはぁと息を荒ぶらせ、震えながら官能に耐える彼。
その姿に5時は愉悦を感じて目を細めた。
『いい様だな。』
5時はくいっと彼の顎を持つ。
『昂って仕方ないだろう?欲しいものはわかってるんだろう?俺に示してみろよ。』
ニヤニヤとベッドに乗り上げ近づいてくる5時に対し、彼は後退りして逃げる。意地でも欲しいものを示したくないらしい。
その高潔さをもっと歪めたいと5時は彼に迫り、ついには彼をベッドの壁まで追い詰めた。
『何を今更拒む?いつも俺からやっている事だろう?それをお前から誘え。』
妖艶な娼婦のように、男に飢えた美しい獣のように、心の底から俺が欲しいと誘ってみろよ。
彼はぶんぶんと首を横に振り、抵抗する。
『俺が[キンスケ]の一人でもか?それともお前にとっての[キンスケ]はあのガキの方か?』
『アレに優しくしても無駄だ。今はガキでも本質は俺と同じだ。ある程度大きくなったらお前を寝取りにくるぞ?』
あの幼いキンスケはそんな事しない!、と言いたげに彼は顔を顰める。
5時はフン、と鼻で笑う。
『お前はあのガキにギンを殺される前の頃を求めているだけだ。今更救えると思っているのか?』
5時は壁に手を添える。
『救いなんて求めちゃいないさ。堕ちるとこまで変わり果てたお前にできるのは、受け入れる事だけだ。』
『お前のキンスケは、この俺だけだ。』
ビリィィッ
5時は彼のドレスを引きちぎり、ホトに装着した玩具を取り外す。
『男が女にドレスをやるのは何故か知ってるか?脱がすためだよ。』
シーツの海にオフィーリアは揺蕩う。
愛憎に取り憑かれた美しい獣に貪られながら。
それが昨日の出来事だった。
身体中の泡をシャワーで流し終え、5時は水を切って彼を抱き抱えて浴室を出る。
柔らかいタオルで彼を包み、拭いたらドライヤーで髪を乾かしていく。
彼は目覚めず刻々と眠り続ける。
彼はとても軽い。薄氷を踏んでも割れない軽さだ。
カタンと体を揺らしても無抵抗のまま人形のように動かない。
ある時、12時がこう言っていた。
『人形ってさ、死体なんだよね。いい人形は死んでいるように見える。死んだ瞬間のまま、永遠に死に続けるんだ。』
うっとりと、まるで恋語がれるように語る12時は異様だったが、今なら彼の言っている意味がわかる。
クロノの成れの果ては、愛玩人形となって永遠に死の川に揺蕩う。
次は何を着せようかと、5時はクロノの成れの果てを抱いてベッドの部屋に向かった。
コメント
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読了しました。第9話、とても濃密でした。特に「泡沫」の比喩が冒頭の泡風呂のシーンから「彼の命もまた泡沫」へと繋がる構造が巧みで、5時の執着の深さと、それに抗いながらも受け入れる「彼」の儚さと強さが浮かび上がる構成に引き込まれました。「人形は死体」という12時の台詞も、永遠に死に続けるという意味で、いまや物語の芯のひとつになっている気がします。救いの不在を突きつけつつも、どんな結末が待っているのか気になって仕方ないです。