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ホスト×服飾学生
ホストエアプ、服飾学生エアプなので色々ご了承の上お読みください。
──
「今日もお疲れさまぁ」
いつもの軽口にいらっしゃいませーと業務的な挨拶を返す。
甘めな香水とアルコールの匂いを仕立ての良いスーツに纏わせている。
金髪が地毛なんじゃないかと思うくらいに似合う精悍な顔つきは、モデルとかで稼げそうなぐらいに整っている。今はふにゃふにゃした顔だけど。
実際はハヤトと名乗ってホストクラブでナンバーワンを毎月争ってるらしい。(本人談)
どんと置かれたカゴから水やお茶、栄養ドリンク、お菓子類、大量の商品を淡々とレジへ通して袋へ入れていく。
「聞いてよお、今日の姫さ──」
コンビニにそぐわない大量の商品をレジ打ちする間、ハヤトが今日あった話をするのを聞き流すのが毎回午前5時前に行う恒例のサービス業務。これだけ酒の匂いをさせておいても口調が少し緩いだけで千鳥足にもなっていないし、これが酒が強い人ってことかと感心する。
今は対応にも慣れたものだけど、最初の頃はなぜか指名されるのが嫌で、来るであろう時間帯はバックヤードに引っ込んだり、レジを代わってもらって品出しをしたりした。
それでも、吉田さんご指名でと必ず他の店員に呼ばれたので、ハヤトが来た時は大人しくレジに徹するようになった。
人と関わるのは得意ではない、友人と呼べる人も片手で足りる。
遊ぶ人もいないし、お金もない。だから、
日中は学生を全うしたくて、夕方から夜にかけてのバイトに加えて深夜からのバイトを探した。
深夜に働くなら定番の工場バイトも考えたが、長時間の単純作業に発狂しそうな予感がしたのでまだ人と薄く関われる仕事にしたら、結果的にホストが常連さんになっていた。
「ねぇ、吉田さん聞いてる?」
ちらっとハヤトを見ると、無意識なのか意識的なのかあざとく唇をむっとつきだしている。
「あ、はい。」
お仕事大変すねー、と手を止めることなく返すとさらにむっとして、
「やっぱ聞いてないじゃん!仕事の話してないって。」
「…失礼しました、お会計8520円でーす。」
これさえ終われば今日はそろそろあがりで、久しぶりに2連休。大学の課題もあるけど、休みという響きに少し元気がでてきた。きっとハヤトにとっては予想外に、ぱぱっと終わらせてしまった。
「あ、カードで。ってもうおわり!?」
この早朝でもテンション高く返してくるのはさすがホストと感心する。こちらも深夜に働くのも慣れたとは言え、さすがに業務時間の終盤にそこまでのテンションは上がらない。
駄々をこねながら、真っ黒なカードを機械へ差し込んで大きな手で小さな暗証番号のボタンをぽちぽちしてるのを遠目で見る。
「名前いい加減おしえてよ。俺たちの仲じゃん。」
またその話題かと顔には出さないようにしながらも呆れる。ネームプレートで名字はすぐバレたが、さらにハヤトはなぜか俺の名前を知りたがっていた。
「いや、教えないて言ってるじゃないですか。お客様とただの店員ですし。」
まったく敬意は無いが、と心の中で付け足す。
「ふーん。でも、この前教えてもらったもんね、仁人くん。」
「…なんで知ってんすか。」
聞いてるのかいないのか、じんとくん、じんくん、じんちゃん…やっぱり仁人かなあ。とハヤトが呼び名をボソッとつぶやいる。
そんなとぼけたことをしながら、支払いが承認されたカードを機械から抜き出して財布へしまう、そんな所作さえ綺麗に見えるのが少し悔しかった。
話を聞くと、俺が休みの時に出てたおばちゃんに聞いたら教えてくれた、と。これだから面食いなおばちゃんは困る。
「本当は仁人から聞きたかったんだけど、教えてくれないからさあ。なんだよ、めっちゃ良い名前じゃん。」
「いや、名前が嫌なんじゃなくて教えるのが嫌なんだって。」
少しため息を吐く。他に店員も客もいないので、それをいいことにハヤトは立ち話を続ける。
「ねえ、来月の休みいつ?なんなら合わせるからさ、ご飯いこーよ。」
「は?」
急な誘いに思考が止まる。
店員と客でしかないのに名前のことといい、随分と馴れ馴れしいというか親しげというか。
酔ってるのだと思いたかったが顔を見てみると随分と真剣で、どうやら本気のようだ。
そんなわけないだろと思う。自分の顔にも出ているが、ハヤトは多分あえて指摘してこなかった。
「いや、そういうのはしてないんで。」
「いいじゃん!1回くらい。肉でも寿司でもなんでも奢るから。」
きっぱりと断ったのに、なんでも奢ってあげると言い返されて無意識にぐっと喉が鳴る。学生生活を送るために、人として最低限の生活まで切り詰めて生活している身としては魅惑の言葉だった。
他人の金で肉、寿司…
頭の中で反芻する。
別に1回くらいならいいかと腹を括ることにした。相手は自称ナンバーワンホストなのだから話題に困ることもきっとないだろうし。
「……来月の休み分かったらまた言います。」
「まじ?やった!」
まるで大型犬のような喜びを見せていた。しっぽがあればちぎれんばかりにブンブン振っていることだろう。
そこからはホストの手腕なのか俺の甘さなのか、気づけば連絡先も交換していて、食事の約束をきっかけにどうにもハヤトから逃げ道を塞がれた気がした。
バイトも終わり、家に帰ってシャワー、朝食を取って仮眠を取るために横になった。
傍に置いていたスマホを手に取ってメッセージアプリを開く。先程も見た、新しいお友だち欄をながめる。
「オレのプライベートのアカウントだから!」
と半ば無理やり交換された連絡先。
きっとホストクラブに通う客からすれば喉から手が出るほど欲しいだろう、プライベートのアカウント。
店に通っている訳でもないし、個人的には連絡が取れたらそれでいいのだが。
数少ない友だちリストの中、勇斗と言う名前、それに異質なピンクのライオンが写ったアイコンをそっと指でなぞる。すると、アイコンが拡大表示された。可愛らしいキャラクターだけど、ジト目とピアスを付けているのがこのアカウントの主とどこか似ている。
別にコンビニで会ってるのとなんの代わりもない、面白みもない自分を知れば勇斗の気まぐれもきっと収まる。この時の俺はそう考えていた。
油 淋 鶏 _ .
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のんの
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コメント
2件
読み終えました〜🥀 ホスト×コンビニ店員…この距離感めっちゃ好きです。仁人の“人と薄く関わる”スタンスが徹底してて、それなのに勇斗にじわじわ絡まれて逃げ場を塞がれてく感じ、早くも執着の気配がしてゾクゾクします。特に「他人の金で肉、寿司…」って反芻するところが現実的で、でも奢られる側の心情をちゃんと拾ってるのが丁寧だなと。連絡先交換後もまだ“お客様と店員”の線を引きたい仁人に、これからどう絡むのかすごく気になります。続き、静かに待ってますね🌙