テラーノベル
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華やかな商店街、人が行き交いとても賑やかな雰囲気を醸し出している。そんな中、物憂げな表情を作りながら歩いていた少女が1人、立ちすくんでいた。ざわめきとともに少女に対する噂話が少女の耳元に入ってくる。
「あの子でしょ……」
「例のよく錯乱する子」
「聞いた聞いた 何やら医者もさじを投げたって……」
「名前は確か……」
噂のもと……華月はそんな陰口など耳にも入らず小柄な体躯を震わせ、何かに向き合っていた。その瞳は空へと向かっていた。住人には華月が虚空を眺めているように写っただろう。華月は何かをつぶやき足早に家へと向かった。
――
(なんであの人たちは普通に生活できているのだろう)
華月は昔からおかしなものや不気味なものが見えていた。文字をよめる年になってようやくそれを妖怪の類だとわかった。同時にみんなにとってそれは本来見えないものというのも察した。そしてそれらは人に敵対し、特に見える人間に害をなすことを理解した。
「みんなと違うのは怖い」
「かれらに殺されたくない」
そう思った幼い華月は隠し通そうとしたがそんなことできるはずなく。華月は諦めて自身の身と心を守ることにした。幸い華月には「言霊」という力があった。言霊とは動物以外の物理現象……例えばものが動くとかを命令しただけで操れるというものだ。反動もあるが使いこなせれば強力な武器となる。そう考えた華月は修行を始めた。心に関しては諦めと慣れだ。人から距離を取り、人に嫌われることを当たり前だと思ったら少しは楽になった。最初は家族含め人から距離を取り、時折怯える娘を心配していた両親もやがては愛想をつかせたように娘を外に放り出した。
「大学卒業までは面倒を見てあげる」
それが両親の口ぶりだった。
なぜそんなことを語ったのかというとその人生に終わりが見えたからだ。
――
「ああ……」
その声色は深い悲しみとほんの僅かな後悔で構成されていた。自宅でまったりしていた華月の前に現れた妖怪は今まで感じたことのない莫大な妖力で溢れていた。
「見鬼の子よ」 「その臓物を食らおうぞ」
口々に言い放つ華月にとって意味のわからない言葉達。かれらにとって華月はとても美味ということなのだろう。こちらからしたらとても迷惑だが。
そのとき、目元を面布でかくした少女が現れた。こちらもおそらく華月を狙う化物だろう。一見少女のような愛らしい見た目をしているが角がある、それに悍ましいほどの妖力。化物が声を上げた。
「ひっ、姫様???生きていらっしゃったのですね」
「そやつは妾の獲物じゃ して、お主よ、まさか妾の食事を邪魔する寸法ではなかろうよ」
「もっ…もちろんでございます」
そう言い残し、化物は姿を消した。残ったのは少女の姿に扮した化物だけ。彼女にもおそらく華月は勝てないだろう。
少女の姿の化物はそっと頬に触れ、華月についていた涙を吹いた。
「くふふ 妾は菜食?主義というものなのじゃ それにしてもお主よ、よく頑張ったのぉ」
華月はぽかんと、口を開け目を見開いた。
「食べるんじゃ……ないの?」
「あれは方便じゃ やれやれ…血気盛んなものは困るのぉ」
呆れたようにため息をつき、華月の方を見やった
「妾は鬼の王の一族のものじゃ まあ、人を食わぬ変わり者じゃかのお」
「お主は見鬼の才の少女か」
以前より気になっていた言葉だ。よく華月を食べようとする妖怪共が言っていた。
「あの、見鬼って?」
「妖力の強い人間のことじゃな 正確には妾たちのことが見えるという意味じゃが、殆どの場合誤用されておる」
(まるで人間社会のようだ)
そう思うのも無理ないだろう
(妖怪達は意志無き化物だと今まで思っていたが文化があるのか)と華月は察する
「して、お主の名は?」
「華月です……?」
華月がそう答えると鬼の王の一族……鬼姫様はニッコリ笑い、不敵な笑顔でこういった。
「して華月よ!妾が護衛になってしんぜようっ!」
コメント
3件
ありがとですっ!がんばります!
初コメ失礼します 頑張ってくださいね 応援してますね