テラーノベル
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進展も文字数も少なすぎて申し訳ないです。
次の日も放課後になって暫くすると、いるまはいつもの教室にやってきた。
なつは自分の席で、窓の外をぼんやり眺めていた。
いるまは、昨日と同じ窓際にいた。
ただ、今日は空が違った。
夕暮れが薄くなって、緋色の空が深い紺色へ変わり始めている。
なつはしばらくいるまを見ていた。
やっぱり、空を見ている。
飽きないのだろうか。
「……何見てんの?」
いるまは、すぐには答えなかった。
少ししてから、窓の外を見たまま言う。
「……星」
なつも窓を見る。
いくつか、小さな光が見え始めていた。
「好きなの?」
「別に」
いるまはそう言った。
少し間を置いて、
「なんか安心するだけ」
「安心?」
いるまが窓に手をつく。
「なんも気にしなくていいっつーか」
「悩みとか忘れられるって感じ」
「ふーん」
なつはそれ以上聞かなかった。
やっぱり変な奴だと思った。
星を見て安心するなんて。
なつには分からない。
空を見たって、何かが変わるわけじゃない。
それでも、いるまは飽きることなく見ていた。
しばらくして、なつはふと気づいた。
「……いるま」
「ん?」
「頬、どうしたの」
「これ?」
いるまが自分の頬に触れる。
少し腫れている。
「ぶつけた」
「⋯⋯そっか。」
なつはそれ以上聞かなかった。
襟元も少し乱れている。
昨日見えた痣も、今日のほうが増えているように見えた。
けれど、いるまは何でもない顔をしていた。
なつも、何でもないふりをした。
「何組だっけ」
「1。お前は?」
「4」
「ふーん。」
窓の外では、星が少しずつ増えていた。
◇
それから、二人は毎日のように会った。
別にずっと一緒にいるわけじゃない。
放課後、人が少なくなった頃だけ。
最初は、ほとんど話さなかった。
同じ教室にいて、それぞれ別のことをしている。
いるまは窓の外を見る。
なつは机に伏せる。
それだけの日もあった。
でも、いつの間にか会話が増えた。
「テスト勉強してる?」
「今回は捨ててる」
「だよな」
「そもそも授業が分かりずれぇ」
「それはそう」
「でも理科はいける」
「は、俺全部無理」
そんな、どうでもいい話。
別の日には、
「眠い」
「寝れば」
「机じゃ寝れない」
「俺毎日授業中寝てる」
「やば」
なつが笑う。
いるまも少しだけ笑う。
それくらいだった。
◇
ある日。
なつが窓際のいるまを見ながら言った。
「また星見てんの」
「うん」
「飽きない?」
「別に」
「俺、星嫌い」
いるまが振り返る。
「なんで?」
「見てても何も変わらないし」
「……そっか」
いるまはそれだけ言って、また空を見た。
なつは、その横顔を見ていた。
別に否定されなかった。
それが少しだけ不思議だった。
◇
また別の日。
いつもの教室で、いるまが言った。
「俺、家嫌いなんだよね」
なつが顔を上げる。
「なんで?」
「帰っても誰もいねぇから」
「……誰も?」
「うん」
いるまは笑った。
「静かすぎんだよ」
「俺も嫌い」
「なつんとこは人いるじゃん」
「……うん」
なつは少し黙った。
「ずっと笑ってないといけない」
いるまがなつを見る。
けれど、何も聞かなかった。
なつも、それ以上は話さなかった。
窓の外では、日が沈みかけていた。
◇
その日。
なつのスマートフォンが震えた。
机の上で、小さな音がした。
画面を見る。
『早く帰ってきなさい。』
なつの表情が変わった。
さっきまで少し緩んでいた顔から、笑みが消える。
「……帰る」
いるまが顔を上げた。
「うん」
なつは鞄を持つと、早足で学校から出て行った。
さっきまで普通だったのに、足が重い。
家に近づくほど、呼吸が浅くなる。
玄関が見えた。
なつは一瞬立ち止まった。
それから、何事もなかったような顔を作った。
鍵を取り出す。
玄関の扉を開ける。
「⋯⋯ただいま。」
暗い家の中へと、入っていった。
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柴桃 乃愛美
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コメント
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うわ、このエピソード、すごく静かで切ない空気感が染みました…。「星を見て安心する」といういるまの言葉と、「何も変わらないから嫌い」というなつの対比が効いてて、二人の置かれてる環境の違いや共通点がじわじわ伝わってくる。頬の腫れや痣に触れない距離感、スマホのメッセージで一瞬で表情が変わるなつ…どちらも何かを抱えてるんだなと。それでも「ただいま」と言える最後の一文が重くて、続きがすごく気になります。