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四季
「…はぁ…まずいな…」
日帝は思い悩んでいた。世界大戦にはひとまず勝った。国際連盟の常任理事国にもなったは良いが………いかせんアジアの国である事と、つい最近名を上げたばかりの国の為、警戒されているのか意見が通らない。まぁ、サイレントパートナーと揶揄される国民性にも問題はあるのだろうが…
更にはヨーロッパ諸国の経済が回復した事により輸出が減っており、続いて起きた関東大地震のせいで不況が繰り返されている。
しかも、何度かは手を組んだ国─アメリカの最近の日本人移民制限や日本排斥運動も激しい。そして中国での影響力を拡大しにも来た。
正直言って、朝鮮辺りの防衛も万全とは言い難い…
「…仕方が無い…」
「で、革命の邪魔してきたくせして俺と国交を回復したいと?」
ソ連は一応議会の席を設けはした。
しかしやはり思うところは有るのか、嫌味を日帝に言い放つ。
「…虫のいい話なのは理解している。刃を向けて来た奴が何をと不快に思うだろうが…」
するとソ連は分かりやすく大きく溜め息を吐いた。
「物理的に刃を向けて来る奴が有るか」
その様子に心底分が悪いことを悟る。
「私も互いに利益の無いことはあまりしたくない。それに、そちらにも益が有る話だ」
「おーおー、そうかい。お前、イギリスやアメリカに不平等条約飲まされた事が有るんだっけか?んなくせして朝鮮にも同じことをしているようじゃぁないか」
嘲笑うようにソビエト社会主義共和国連邦が日帝を見下ろす。
遠回しに、お前はどれ程被支配者としての痛みを知っていても、支配者層になれば途端に掌返して自分の利益のみを追求する利己主義者だと言っている。
そう、故に同じようにソ連を支配しようとしているのでは、と刺しているのだ。
背が高く、圧迫感が有るのと事実である所を突かれ、日帝はたじろぐ。
「ははっ。そんな焦んなよ。大国にそんなこと出来る度胸がねぇのは知ってるよ」
「…ッ!んなっ…!!」
一瞬、安堵しかけた日帝だったが、煽られている事に気付き声をあげる。
「そんなことより…」
そんな日帝の声を遮り、ソ連は日帝の右腕を左手で引き寄せる。
「ひっ…」
日帝が思わず小さく悲鳴をあげる。それには理由があった。
ソ連の左手は日帝の腕─右腕を折った手だ。嫌でもあの時を思い出される。
「腕…治ったか?」
「…え?」
「ほら…あん時、えげつねぇ音してたけど…つーか、曲がっちゃなんねぇ方向逝ってなかったか?大丈夫?」
酷くたじろぎ、困惑する。その様な言葉を受けるとは思ってもみてなかったのだ。
ぐるぐると思考を回転させている間もソ連は心配した顔色で日帝の様子を伺っている。
そして、日帝は急に顔を赤らめた。
「あっ…嗚呼。わっ私も大国になれたから…やっと…追い付けたから…もう、治ってる」
「そうか」
日帝は、ばっと腕をソ連の手から離し、答える。
若干ソ連は名残惜しそうにしながらも、微笑を浮かべる。
人のよさそうな、少し幼さの残る笑み。
先程までの作られたような冷たい表情とは裏腹に、心の底から出たような暖かい感情を感じる表情。
日帝は少し、己の感情に違和感を覚えた。
心がじんわりと極寒の中、日光を浴びている様な温もりに包まれる。
心臓が、一度、少し痛いくらいに脈打った。
安堵にも似たそれ。
「じゃ、内容を決めるか」
「あ、嗚呼…」
日帝はその違和感を、押し込めた。
1925年(大正14年)1月20日 日ソ基本条約締結
(同年、2月25日に批准)
主な内容
·国交樹立──日ソ両国で正式に国交を樹立。
·ポーツマス条約の承認──ソ連がポーツマス条約の法的効力を承認。
·北樺太からの撤兵と開発権──日本が占領していた北樺太から撤兵し、代わりに同地方における油田の半分を開発する権利を得る。
「よし、これで条約は結べたな!!」
日帝は平常を保っているつもりだが、口角が満足げに緩んでおり、声色の節々にも喜びが漏れている。
一方、ソ連はそんな日帝を微笑ましそうに目を細め頬杖を付きながら眺めている。
日帝は筆を机へ置き、条約の紙を持ち上げ目を輝かす。そんな子供じみた日帝の様子をソ連は観察していた。
ふいに日帝がにやけるのを止める。
そして席を立ち、ソ連に真剣な顔をして向き合った。ソ連は日帝の突然の行動に分かりやすく驚きに表情を変える。
「我が名は大日本帝国。ソビエト社会主義共和国連邦殿、これから宜しくお願いする」
日帝の畏まった様子に対し、ソ連も察して席を立つ。
「ソビエト社会主義共和国連邦、略してソ連だ。宜しくな。大日本帝国どの」
そしてお互いに握手を交わし、砕けた空気になり─
「ふっ、あは、あははっ!」
日帝がころころと鈴の音のような笑い声をあげた。
「うわ。何だよ」
「いやっ…!先程の君の驚愕した表情を思い出してな…ふふっ」
途端にソ連は少々頬を朱色に染める。
「あーもう!忘れろ忘れろ!!忘れてくれ!」
「ふひゃあ!!ほっへひっぴゃるなぁーー!!」
ソ連は不満げに日帝から手を離す。
解放された両頬を日帝は「いたた」といいながらさする。
「ふふっ。最初は思想は相容れぬ物だし、大きいから怖い奴だと思っていたが…面白いし、良い奴だな!」
笑顔を綻ばせながら日帝は言った。
「そうかよ」
ソ連は軽い様子で返答するが、口が少し嬉しそうに緩んでいる。
日帝は祖国に帰る準備をし始めた。それを眺むソ連は堪らず言葉を紡いだ。
「なぁ、日帝」
「ん?」
日帝が振り向き応じる。
「今度は…ボルシチでも作っとくよ」
また会いたい。また言葉を交わしたい。また触れたい。そう思いながら十分の一も言葉に出来ず漏れた小さな願い。
日帝は先程までの無表情を一変させ、目を輝かせた。
「っ!本当か!?次はいつにする!?」
ソ連の予想外に喰い付いてくる日帝。子供のようにめいいっぱいに笑みを浮かべて。
「!じゃあ─…」
まるで子供同士の遊びの約束のように、予定を組む。
チクリ、と心臓が痛んだ。
今回もここまで読んでくれてあざまぁーーーす!!1日でハート50個越えるとは思わないじゃ無いですか…驚きましたよ。これでも爆速で下書き取ってきて書いたんです!許して!そしてやはりソにては良いですよねそうですよね。本当に今回も読んでくださり有り難う御座いました!ちょっと…さすがにしんどいんで一週間に一回更新にさせて貰います。三度目ですが、有り難う御座いました!!
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