テラーノベル
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車での乗り入れは不可なので、渡るなら徒歩のみ。
アーチ部分は全て小刻みな階段状の床板で組まれていて、欄干ももちろん木製。要所要所に打たれた留め具は、たたら鉄で出来た和釘が使用されています。
橋を支える四つの橋脚は、どっしりとした石垣で出来ていて、その石垣を支える土台は石畳。
子供の頃、夏になると私は両親に連れられてこの橋のたもとでよく川遊びをしました。
橋の影になった橋脚付近の石畳に荷物を置いて、美しい水の中を泳ぎ回った記憶があります。
五連のアーチから別名五橋と呼ばれるその橋も、そこに隣接する公園も、山の上にあるお城――山城――も含めて市が管理しているんですよ、と修太郎さんから聞かされた私は、「公園も、ということは、ここも公園緑地係の管轄ですか?」とお聞きした。
でも私の記憶が正しければ、前に修太郎さんに教わりながら作ったマップに、ここは載っていなかったような気がします。
そう思いながら修太郎さんを見つめたら、案の定、「いえ、ここは観光課が管理していますので、うちとは別なんですよ」と教えてくださった。
二人で手を繋いで、アーチ状になった橋をゆっくり歩く。
季節は確実に夏に向かって進んでいる頃合いですが、川に掛かった橋の上は夕方ともなるとまだまだ風が冷たいです。
それでも今よりももっと寒い時分――桜の頃――には多くの観光客で賑わう橋なんですけれど、今は夏休みにもなっていない、桜も散ってしまったと言うある意味中途半端な時期。
橋を渡る人の姿は私たちを含めてほんの数組しかいませんでした。
修太郎さんは橋の途中、ちょうど橋の下を流れる川が一際深くなっている辺りの、アーチが一番高くなっているところで突然足を止めると、私の手をギュッと握っていらっしゃいました。
「修太郎さん?」
急に歩くのをおやめになられた修太郎さんに合わせて立ち止まると、その反動で先ほどつけていただいたイヤリングが耳元でシャラン、と幽けき音を立てて揺れたのが分かった。
修太郎さんの背後には城山があって、その山頂にぼんやりとお城が白く浮いて見えています。
お城をバックに立つ修太郎さん、絵になるなぁと思って見惚れていたら……。
「日織さん」
修太郎さんに、低く静かな声音で呼びかけられました。
そのお声に、私が小首を傾げて彼のお顔を見上げると、「さっきね、僕はそのイヤリングと一緒に、以前頼んでおいた品物を受け取ってきたんですよ」とおっしゃった。
「今日はそれを受け取るついでに、普段使いに日織さんがご自身でお好きなリングを選ばれたらな……と思ったのですが、案の定選んでいらっしゃらなかったので……。少し大仰になってしまうかもしれませんが、やはり当初の予定通り、これをつけていただくことにしました。――受け取って、いただけますか?」
言いながら、修太郎さんが胸ポケットからリングケースを取り出された。
そのふたをパカッと開けられて眼前に差し出された私は、突然のことに驚いてしまいました。
「え、あ、あのっ……これ……」
ケースの中には、さっき私が見ていたファッションリングなんて比べ物にならないような、見るからに高価そうな指輪が入っていた。
ハート型にカットされた大きなダイヤモンドが鎮座する先は、間違いなくプラチナです。
「婚約指輪です。今更と思われるかも知れないのですが、けじめとしてちゃんと言わせてください。――日織さん、僕と……結婚して下さい」
突然、告げられた言葉に、私は思わず全身が震えて動けなくなってしまいました。
「あ、あの、修太郎さん……私っ、その……」
嬉しさと戸惑いとで頭がパニックで、どうしたらいいかわからなくなってしまった私に、修太郎さんが懇願なさるような声音でおっしゃいます。
「日織さん、もしも……もしもこの先も、僕とずっと一緒にいてくださるなら……ただ一言、はい、と……」
そのお声に、私は半ばつられるように「はいっ……!」と即答していた。
私、ずっとずっと修太郎さんと一緒にいたいですっ。
思いながら修太郎さんをじっと見つめたら、「でしたら指輪ごと僕の気持ちを受け取っていただかなくては……その……立つ瀬がありません」と不安そうな目でじっと見つめ返されてしまう。
私は修太郎さんのその表情に、やっと心が決まりました。
「あ、あのっ、本当に……有難うございます……。す、凄く凄く嬉しいのですっ。わ、私っ、物凄く世間知らずの不束者ですが……その、宜しくお願いしますっ!」
言って、彼の様子を窺うようにそっと、左手を修太郎さんのほうへ差し出して、
「しゅ、修太郎さんが……つけて、くださいますか?」
ドキドキと高鳴る心臓を押さえながら、震える声で、そうおねだりした。
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コメント
2件
きゃー、プロポーズ٩(ˊᗜˋ*)و
読み終えました〜……もう、胸がいっぱいです🥀🤍 橋の上で立ち止まって、風の冷たさとか、お城を背にした修太郎さんの姿とか、全部が一瞬の特別な時間になってて……そこからの婚約指輪、痺れました。 「受け取っていただけますか?」って、あの声音が目に浮かぶようでした。 日織さんの「はいっ!」も、震えながら左手を差し出すところも、ぜんぶが愛おしくて……ずっとずっとお幸せに、って心から思いました🌙