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#続くかは知らん☆
ただの僕
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脱力し、呆けた顔の少年を見つめる。
(やっぱり、似てる。)
自分に対してひどく怯えるくせに、どこかふてぶてしくて、表情がよく変わる。
そんな姿が、先ほど置いてきたノームの面影に、少しだけ重なって見えた。
『僕は……、君が散々食い散らかしたノームだよ!』
彼の口から明かされた事実は、驚きよりもむしろ、妙な納得を生んだ。
こちらの視線に気がついたのか、長い前髪の奥の、群青色の瞳が向けられる。
「その……さっきは本当にごめん。」
気まずそうに告げられた謝罪に、先ほどの出来事を思い返す。
ごめん。と言うのは、手を掴んで引き留めたことだろうか。
それとも、大声で騒いだこと?
何に対しての謝罪かはわからなかったが、特に謝って欲しいことはなかった気がする。
「別に」
端的に返すと、少年は面食らった顔をした。
「でも、急にノームだとか言われて驚かなかった?
それに、僕は君を知っているけど、君からしたら初対面だろうし……」
少年自身も考えがまとまっていないのか、よくわからない身振り手振りを加えて、早口で言葉を紡ぐ。
「そのノームのことなんだけど……」
進まない会話にいい加減煩わしくなり、話を遮る形で割り込む。
私が口を開くと、反対に少年は硬く閉ざす。
「復讐でもしにきたの?」
少年がノームだと気がついてからずっと思っていた、素朴な疑問を投げかける。
敵か、そうでないか。
それ次第で、この少年の扱いが変わってくる。
見つめあって数秒後、彼の首がもげるんじゃないかという激しさで横に振られる。
「そんなわけないじゃないかっ!」
首から上には、心底理解できないという顔が乗っている。
「じゃあ、謝ってもらいにきたとか?」
この問いかけにも、首は横に振られる。
「僕は君を追いかけてきたわけじゃないんだ。
あの後、世界が崩れて、強制的にここに戻された。
そしたら、たまたま君がいたんだよ。」
あくまで偶然だという。
「本当に?」
最後の念押しをする。
それに、彼はしっかりと頷いた。
少し考え込み、彼の困ったような表情を一瞥する。
そこには、確かに悪意は感じられなかった。
それに……
(仮に襲われても、私の方が強そうだしね。)
先ほど掴まれた手をさする。
ハッキリとした意思は感じても、その力に痛みや拘束力はなかった。
彼は脅威ではない。
ひとまずその考えに落ち着く。
「わかった。」
身に纏っていた警戒を解く。
私が納得したことに安心したのか、彼の表情が少しだけ穏やかさを帯びていた。
正直意外だった。
自分でも、罵詈雑言を浴びせられても仕方がないことをした自覚がある。
正気を失っていたとはいえ、言い訳にはならない。
だから、彼が何も求めてこなかったことが心底理解できなかった。
一度、素直に謝ろうかと思う。
しかし、その考えはすぐに霧散する。
謝ったところで、私はまた繰り返すかもしれない。
無責任な謝罪はしたくない。
こんな時、どうやって償えばいいのかわからなかった。
むしろ、彼がなんらかの見返りを要求してくれた方が楽だったのかもしれない。
身の振る舞い方が分からず、手持ち無沙汰な時間が流れる。
今度は彼の方から話しかけてきた。
「また、レディのところへ向かうの?」
場を繋ぐための間に合わせの言葉に、緩くかぶりを振る。
「じゃあ、どこへいくつもりなの?」
私の返答が意外だったのか、今度は純粋な好奇心を帯びた言葉が投げかけられる。
その問いかけに、私は素直に答えた。
「助けたい人がいるの。
私が置いてきてしまった人。
その人のところ。」
「え……意外」
彼が漏れた本音を咄嗟につぐむ。
私が誰かを気遣うのがそれ程に意外だったのだろう。
(失礼なやつ。)
特に話すこともなくなり、今度こそ部屋を後にしようとする。
しかし、好奇心が勝ったのか、はたまた何か別の目的があるのか、彼は再び口を開く。
「僕にも、それを協力させてもらえないかな?」
その提案に顔を顰める。
「善意で言ってるなら、いらない。
自分のことは自分でする。」
なるべくハッキリ断ったつもりだったのに、彼はなおも食い下がる。
「僕はそんなお人よしじゃないよ。
正直に言うと、君のことを利用させて欲しいんだ。」
ずっと怯えるか気の抜けた顔だったのに、今だけは覇気に欠けるものの、真剣な顔をしている。
答える代わりに、立ち止まることで続きを促す。
「多分だけど、僕は一人ではこの世界から逃げられない。
さっきも言ったけど、この世界は君が消えると崩壊するみたいなんだ。
だから、君に同行する許可が欲しい。
代わりにできる限りの手伝いをするから。」
最後の方はもはや縋るようなお願いへと変わっていた。
(このままだと、断っても勝手に付いてきそう。)
さながら、ノームのように。
断りたい気持ちを押し出すように長い、長いため息を吐く。
(まぁ、これが償いだと思えばいいか。)
「……身の危険を感じたら相方をすぐに見捨てること。
それができるなら、いいよ。」
最大限の譲歩をして、許可を出す。
私が出した条件に頬を引き攣らせるも、目の前のしょうは大きく頷く。
「わかった。」
目の前に自分よりも一回り大きい手が差し出される。
「僕はランナウェイ・キッド」
少し冷たいけれど、確かに温もりのある手を握り返した。
「私はシックス」
「「よろしく」」
こうして、私たちの関係もとい、同盟のようなものが結ばれた。
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「えっと、ここを通るの?」
キッドの困惑した声が背後から聞こえる。
私の目の前にあるのは壁。
いつも通っていたはずの穴は跡形もなく消えていた。
「僕もここよく通るけど、穴なんて見たことないな。」
続いて告げられる新事実。
(通りで道を間違えたわけね)
会うはずのなかった私たちが出会った時点で考えておくべきだった。
おそらく、私の目覚めが少しだけ早かったんだ。
こじ開けられないかとも考えたが、ここで時間を消費したくなかった。
「キッドはいつもどこを通ってたの?」
手についた埃を払いながら、後ろを振り向く。
キッドの視線は目が痛くなるようなライトの向こう側、私が走ってきた方角へ向けられていた。
「僕はいつもあっちに進むけど……。
案内しようか?」
その提案に小さく頷く。
早速、想定とは違う展開へと転がる状況に、この先の不安を覚えた。
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