テラーノベル
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「おはよう、千愛ちゃん。運動会、見に行くね」
「走るのは見なくていいけど、ダンスは見て!」
「頑張って探すね」
と言う間に、亜優はしっかり、ピッタリ、千愛ちゃんの隣に並ぶ。
家の外に出てしまえば、表情も明るい。
二人はいつものように、集合場所の公園へ歩き始める。
私もいつものように二人の後ろからついて行こうと、隣の千愛ちゃんの家の前を通り過ぎようとした時
「おはようございます。今日は俺が公園まで行きます」
と、秋山さんが玄関から小走りで出て来た。
「秋山さん、おはようございます。ありがとうございます」
私がそう言った時には、もう秋山さんの背中に声が当たる。
私は少し大きな声で
「じゃあ、亜優、あとで行くからね。千愛ちゃんパパが、公園まで行ってくれるって」
と手を振ると
「おっけー。ママ、いってきまーす!ばいばーい」
亜優は一瞬だけ振り向いて、こちらに大きく手を振った。
秋山さんは、もう学校まで行くのか?と思えるくらい、部屋着ではなく、きちんとシャツを着て、スニーカーを履いて二人の後ろを歩いて行く。
本当に羨ましいパパだ……
「おはよう、直美さん。もう行った?」
「おはようございます。はい、秋山さんが一緒に行ってくださったので、お弁当仕上げてきます!助かりました」
タオルで手を拭きながら玄関から出てきた風子さんは、手が離せなかったのだろう。
「主人が一番張り切っているから……ダンスの位置まで、千愛でもそんな詳しくわからないってことを、しつこく何回も聞いていたわ。千愛の参観とか運動会を夫が撮っていたのを見ると、千愛だけが撮ってある…」
うん?
「千愛ちゃんのパパだから、いいんじゃないですか?」
「そうなんだけど、そういうレベルじゃない」
なんだか楽しくなさそうに、風子さんが
「千愛だけを撮りすぎなの。例えば、みんなで並んで歌ったり踊ったりするでしょ?その全体が全然写っていなくて、千愛だけが踊っている動画みたいな出来上がりになる。徒競走で、6人で走っているのに、千愛だけを50メートルカメラが追いかけているって感じ…何着か全くわからない」
と言ったのは、私にとって羨ましい限りだった。
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