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《誠の物語》
「やめてッくださーーー」
命乞いが途中で無音になる。 そんなシーンを何回見てきた。
__なんで、俺はこんなことをしているのだろう。 思い出そうとしても、記憶は暗い闇の中に沈んでいく。 手を伸ばしても、すり抜けていく。
俺が思い出せる一番昔の記憶は紅い血と誰かの悲鳴。 そして、黒い暗い、、、なにか。
記憶はないけど俺はニンゲンを恨んでいた。きっと俺の覚えていない昔で何かあったのだろう。 頭では忘れても、体が覚えてるってやつだ。
俺はずっとずっと__
たまにニンゲンの村や町に行っては、気まぐれにそこを握りつぶす。 ニンゲンがいた痕跡が塵一つ残らないくらいまでに。 俺はニンゲンを憎んでいた。
空がどんより曇っていて、ジメジメする。 低気圧で少し頭痛がして、体全体が倦怠感に包まれている。
かなり大きめの街に来た。 人々はみんながみんな忙しそうに足を動かしている。 フードを深くまでかぶって髪を隠す。
俺は多分、龍人なんだと思う。 でも翼なんてないし角も生えてない。 鱗だって足と腕の一部にうっすらあるだけだ。 でも、髪の毛は立派に銀色。
鱗と銀色の髪の毛それだけで龍人とわかってしまう。 銀色の髪色は龍人以外の種族は持っていない。 つまり、翼や角なんてなくても1発で龍人って気づかれる。 龍人=人外だから今日も俺は髪を隠す。 まぁ、明日この街潰すけどね。
「せんぱーい」
「どうしたの〜?」
華飛は今日食べるご飯の食材を選んでいるのんに声をかけた。
「なんでこの街にしばらく泊まるの?」
のんは目を向けずに答える。
「この街に探してる人が来るはずだから」
「その人って誰?」
やっと顔を上げると店長に「これとあれください」と商品を購入し始める。
「誠って人」
聞いたことのない名前に華飛は首を傾げる。
「有名な人なの?」
食材を購入し終わったのか振り返ったのん。
「まぁ、有名かも」
曖昧に答えられた。
「会ったらわかるよ」
そう言いながら優しく微笑んだ。
__深夜。 月が限りなく満月に近づいた時間帯。 昼間の街の忙しさは夜の闇にかき消され、静けさだけが残されている。 街中が息を潜ませ俺を睨んで追い出そうとしているかのような錯覚におちいった。
フードをかぶり、ただ自分だけの街を歩く。
街の中心。 大きな噴水があるところまできた。 夜だからか水は流れておらず、 勢いを失った水が静かに星空を写している。
両手を横に大きく伸ばし魔力を手に集中させる。
「死ね」
ゴゴゴゴゴ
地鳴りがして、俺を中心に密度が高くなっていくのが感じられる。 建物がどんどん倒壊して粉々になっていく。 渦のように範囲が大きくなって、あたり一面の地面に誰のものかわからない血が付いている。 これに飲み込まれたら全てが圧縮され、 気づく間も無く圧死だ。
「おーい」
、、、
誰かの声がしたような
「いったんストーップ」
声のする方に目を向けると誰かが立って両腕を広げて止まれとジェスチャーをしている。
めんどうだ。 そのまま潰れろ。
視線を逸らした。
ビュンッ
耳元で大きく風を切った音がした。 それも束の間、強風が俺を襲う。 粉々にした家の残骸が夜空に飛んだ。 腕で顔を隠し頭を守る。
風が止み 風がきた方を見ると、さっきのやつが短刀をもっている。
「ちょっとストップね〜」
?????
は?
何が起こった???
俺の魔法が切られた??
魔法って切るのにも、同じかそれ以上の魔力必要なのに??
混乱している間にもあいつは近づいてくる。
「自分はこの攻撃避けれるけど後輩が避けれないからね」
どうする? もうあいつとの距離は20mくらいしかない。
「誠?だよね」
ッ!名前、、、!
もう一度手を伸ばし攻撃魔法をあいつに向ける。 誰だか知らないが俺の名前を知っている。 だとしたら俺を殺しにきたのかも、、、
「ありゃ?自分君に危害を加える気はないよ」
両手を上げて「降参」と言っているが信じられない。
「信じられるかッ!」
「いやいや自分は君と話すために、、、」
ガンッ
最後まで聞かずに自分の出せる最大の力で魔法を放つ。 どう考えてもオーバーキルすぎる威力の攻撃だ。 ちょっと威力が強すぎたのか周りが砂埃で見えない。 身構えながら正面を睨む。
「、、、お〜あぶなぁい!服かすった」
背後から声が聞こえる。
振り向き座間に隠していたナイフで抜刀する。 しかし、そのナイフは宙を切り代わりに俺の首元に短刀が触れている。
「動かないでね」
静かに囁かれているそれは、さっきのおどけたような声とは違う心の芯が凍るような感覚がする声だった。 震えそうになる声を抑え訪ねる。
「お前はだれだ。なんで、、、」
「、、、」
小さく息を吸う。
「なんで、、、すぐ俺を殺さない」
最後の方の声が掠れた。 こいつは身のこなし方などを見るに暗殺系の何かだ。 命を狙われる理由なんて幾つもあってわからない。 家族や大切な人を殺したことへの恨み。故郷を壊したことへの復讐。そんなところだろう。
それはわかってる。 でも、、、今更だけど死ぬのは怖いらしい。
「なぁ、、、お前はなにが望みだ。金なら出す、言うことも聞く。だから見逃してくれよ。俺だってしたくてこんなことしてるわけじゃない。だから、さぁ」
やたらと口が回る。自分から発せられる薄っぺらい言葉で、自分の中心にある何かが瓦解していく。 それでも止まらず喋り続ける。
「俺を生かしておくことに少なからずメリットがあるはずだ。俺を今ここで殺すよりは、もっと長期的に俺を操れた方がいいんじゃないか?それともなんだ、俺は_____」
首から短刀が離れた。 驚いて振り返るとこいつはもう短刀を鞘にしまって、こちらを横目で捉えている。
いまなら、この間合いなら、、、殺せる。
心の中で誰かが囁く。
「わかってくれたのか、、、ありがとう」
いかにも感謝しているような上っ面だけの笑顔を顔に浮かべる。 すると、こいつから警戒の気配が消えた。
この時を待っていた。
身を躍らせナイフで斬りつける。 何かを斬った手ごたえの後に血が飛んでいるのが見える。 勝利を確信した瞬間、俺の記憶はプッツリと途絶えた。
不規則に床が揺れる振動で目を覚ます。 うっすら目を開け、ぼーっと周りを見る。 馬車か何かだろう。
そこまで考えて勢いよく起き上がる。 額に乗せられていた濡れたタオルが床に落ちた。
「あ!だめだよ!もうちょっと寝てて!」
隣から声が聞こえて飛び上がる。が、頭に殴られたような激痛が走りそのまま座り込んだ。動けないまま声の正体を見る。
「せんぱい!まことって人起きたよ」
御者席の方に声をかけているこいつはなんだ? 背の低いガキ。 フードをかぶっていてよく顔は見えないが、いかにもガキだ。 なにがあったのかよく思い出せない。 こいつはだれだ?
そんなことを考えていると上から声がした。
「グッドモーニング!誠!」
見上げると、そこには既視感のある顔が ニコニコしながらこちらを見下ろしている。
こいつ生きてたのかよ。 内心舌を鳴らし、睨みつける。
「お前は一体なんなんだよ、、、」
「もー!お前じゃないよ!誠!君は人のこと”お前”とか”こいつ”とか”あいつ”とかってわかりにくい!」
、、、
「自分はのん!でこの子は華飛!」
だからこれからはお前とか言わないでよ!っと念を押してくる。
めんどくさいな、、、 なにも言わないでいると分かったものとして話が進んでいく。
「あーゆーおーけー?おーけーね!単刀直入にいいます!誠!自分達と一緒に来てくれない?」
「断る」
ほぼ食い気味に返したそれにこいつの目が大きく見開かれる。
「なんで!!?」
「一緒にきたら楽しいと思うけどなぁ」と呟く声が聞こえる。 それを聞き舌打ちをする。
「なんで俺がお前のためなんかについていかなくちゃいけない」
そうだ、俺はこんなぬるい奴らとは違う。
「、、、」
「お遊びがしたいなら他のやつを誘え。俺に2度と話しかけるな」
そう言い放ち、馬車から飛び降りようとした時、 「寂しそうだったから」 思わず振り返る。 俺を見つめる銀色の瞳には、化け物でもなく、落ちこぼれでもなく、ただ1人の孤独な少年が映っていた。
「自分には、誠がすごく寂しそうに見えるよ?」
「、、、だからなんなんだよ。関係ないだろ」
銀色の瞳が真っ直ぐ俺のことを見つめる。
「まぁそれを言われちゃぁ何も言えないけどね、、、ただのお節介だよ。そのほかに理由があるとすれば恩返しかな?」
そう言ってニコッと笑った。
ふと楽観的な考えが頭をよぎる。 こいつらと一緒に行けば、俺の存在理由ができるんじゃないか?
今更そんなのは虫が良すぎる話だ。
、、、その場にあぐらをかいて座る。
「まぁ俺はお前に一度殺されかけているし、死にたくないからな」
そう。あくまで昔の俺はこいつに殺された。 俺がそうしたいとかじゃないから。
「しょうがないからついていってやるよ」
外の景色を眺めながらボソッと呟く。 それが聞こえたのかもしれない。笑いながら手を差し伸べてくる。
「はい!じゃあもう”お前”なんて呼ばないでね!」
その手を軽く叩く。
「はいはい。わかりましたよ。”先輩”」
コメント
1件
第2話、読み終えました!誠の孤独と自己嫌悪がひしひしと伝わってきて、胸が締め付けられました。自分でも止められない破壊衝動と、「死ぬのは怖い」と掠れる声で言うところが特に印象的です。そんな誠に「寂しそうだったから」と真っ直ぐ向き合うのんの言葉が、すごく沁みました。あくまで建前で「ついていく」と決めたラストの心情、めちゃくちゃ気になります!続きが楽しみです🌷