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第9話 「権能発表」
旅出発前夜。王城の奥、円形の儀式場。
床に刻まれた魔法陣が淡く光り、
旅に同行する者たちが順に並ぶ。
「旅に出る前に、互いの権能を把握する」
「それが規則だ」
そう告げたのは、儀式を管理する老導師だった。
「では――順に」
うた
うたが一歩前に出る。
「御崎殿は……音を媒介に魔力を操る」
「強化、干渉、精神安定……まぁ、補助寄りじゃな」
「音楽魔法か!」
「便利っすね!」
場の空気は和やかだった。
はるてぃー
「春田殿は炎系」
「火力と制圧が得意じゃな」
魔法陣に、赤い火花が走る。
「王子らしいな」
「分かりやすい」
頷きが広がる。
山田
「お主の特別なものは――運だな」
魔法陣が一瞬、バグったように揺れる。
「……幸運補正、強制介入型?」
導師が目を細める。
「厄介なやつだ」
「よく言われるわ」
こむぎ
「小室殿は感知と索敵じゃな」
「あと……逃げ足」
「こむぎらしいな」
「確かにそんなイメージがあるようなないような?」
軽快に笑うと、魔法陣が柔らかく光る。
ゆーま
ゆーまは一拍置いてから前に出た。
「お主は……結界、制御、国土防衛特化」
「本来旅向きではないが、悪くはない」
導師が深く頷く。
「国家級の権能だな」
場が少し引き締まる。
きゅー
「えっと……僕?」
きゅーは首を傾げながら前へ。
「よく分かんないけど……」
「強化?あと、みんなが元気になる気がする!」
魔法陣が、ふわっと暖色に染まる。
「お主は精神補正……」
「そして無自覚型じゃ」
「かわいいな」
たくぱんの方を見ると、
ほんの一瞬だけ視線が柔らいだ。
導師が、深く息を吸う。
「……最後」
場の空気が変わる。
「柳瀬拓人」
たくぱんが前に出る。
足音ひとつで、
魔法陣が――沈黙した。
光が、消える。
「……え?」
「反応、しないだと?」
ざわり、とどよめき。
導師が、青ざめた顔で言う。
「……いや、違う」
震える声。
「“測定を拒否されている”」
たくぱんは淡々と口を開く。
「俺の権能は――」
一拍。
「抑止(サプレッション)」
空気が、重く落ちた。
「発動条件は単純だ」
「“脅威と認識した存在の、権能を封殺する”」
沈黙。
「……範囲は?」
はるてぃーが、かすれた声で聞く。
「視界内」
「持続は?」
「必要なだけ」
導師が、完全に理解した顔になる。
「……国家消滅級」
「違う」
たくぱんは否定する。
「戦争抑止級だ」
誰も、笑えなかった。
その時。
「たくぱん!」
きゅーが駆け寄る。
「すごいね!」
たくぱんは一瞬だけ驚いた顔をしてから、
いつもの低い声で言った。
「……だから言っただろ」
「危ないことは、俺がやる」
その瞬間、
全員が確信した。
(こいつが一番、旅に出しちゃいけない王子だ)
そして同時に。
(でも――きゅーがいる限り、
この権能は“守るため”にしか使われない)
旅立ちの条件は、”一つ”達成された。
第10話 1/7 投稿予定
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