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⚠️光が死んだ夏・ヒカル×よしき・心理的調教・口調、性格違う(多分)
第二部 ― 侵食・依存の芽生え ―
翌日。
教室の窓から差し込む朝日が、よしきの机を照らしていた。
カバンの中の教科書に手を伸ばすけれど、心はどこか落ち着かない。
「よしき、昨日は遅くまでいたんだろ?」
ヒカルの声に、思わず体がこわばる。
「……別に、たいしたことない」
言葉はそう返すものの、胸の奥に居座るざわつきは消えなかった。
ヒカルは机の横に腰を下ろす。
「そうか……でも、おまえの顔色、昨日とは違ったな」
細い眉がぴくりと動く。よしきの視線は自然と逸れる。
「……は? 別に、変わってないし」
否定しようとするが、目が合うと胸の奥がざわつく。
否定の言葉を飲み込むと、ヒカルの視線が勝手に心に食い込む。
「黙ってるときほど、俺の言うこと聞いてる顔になるな」
その一言に、よしきは思わず肩をすくめる。
顔が熱くなるのを感じた。
なぜか、反抗したくても言葉が出ない。
放課後、二人は一緒に帰ることになった。
歩きながら、ヒカルがふと口を開く。
「おまえ、最近どうしても動きが鈍いな。俺が言わなきゃ、何もしないんだろ?」
「……べ、別にそんなこと……」
またしても反論できず、言葉はかすれて消える。
ヒカルはそれを見逃さず、くすりと笑った。
「ほら、やっぱりな。
おまえ、俺に縛られると安心するんだろ?」
心臓が跳ねる。否定したい気持ちと、妙な納得感が同居する。
歩く足も、心も、少しずつヒカルのペースに合わせられていることに気づく。
「……安心って……」
思わず口にした言葉に、ヒカルはにやりと微笑む。
「そうだろ? 逃げなくていいんだ。
俺がいれば、全部俺に任せていい」
その言葉に、胸がざわつく。
抗おうとする自分と、安心したい自分がせめぎ合う。
この感覚は初めてだった。
ある日、放課後の教室で二人きりになったとき。
ヒカルは机に肘をつき、よしきをじっと見つめる。
「なあ、よしき。おまえ、俺の言うことを待ってるだろ」
その問いに、よしきは息を飲む。
逃げたいのに、どこかで待ってしまっている自分がいる。
「……待ってなんか……」
小さく否定するも、視線は自然とヒカルに向かう。
「嘘つくなよ」
ヒカルは指先でよしきの顎を軽く上げる。
強くはないけれど、抗えない。
「俺の言葉に従わないと、落ち着かないんだろ?」
胸がぎゅっと締め付けられる。
その感覚に抗うことができず、言葉も出ない。
ただ、ヒカルの視線に支配されるまま、立っているだけだった。
「おまえ、ほんとに従順になってきたな」
ヒカルは微笑む。
「まだ気づいてないかもしれないけど、俺が呼べば、勝手に従う」
よしきの内心は混乱していた。
悔しい気持ち、屈辱感、でもどこか心地よい安堵。
それが自分でも理解できず、胸の奥でざわつく。
「……俺、なんで……こんな……」
つぶやいた声はかすかで、でも正直だった。
ヒカルはその声を聞き、さらにゆっくり近づく。
「それでいいんだよ。
おまえはもう、俺の言葉で動くのが自然になってる」
夕暮れの街路を二人で歩きながら、よしきは自分の変化に気づく。
知らないうちに、ヒカルの支配が日常に入り込んでいたのだ。
その夜、家に帰っても胸のざわつきは消えない。
日記に「今日は何も自分で決められなかった」と書きながらも、
どこか安心している自分を見つけ、言葉にできない気持ちに困惑する。
――そうか。
俺はもう、ヒカルに従うことを待っている。
いや、気づかないうちに従ってしまっている。
その事実に気づいた瞬間、よしきの心は少しずつ解けていく。
恐怖よりも、どこか心地よい安堵。
この感覚は、逃げようとしても逃げられない、ヒカルの支配の力そのものだった。