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3.「舞踏会前夜」 ルークはデビルズパレスの屋根裏部屋で目を覚ました。時計を確認していつも起きる時間だと認識すると、寝間着を脱ぐと燕尾服に着替え、姿見で乱れてないか確認をする。それから今日の予定を確認した。彼の主な仕事はこのデビルズパレスの金庫や食料庫、周辺の見回りなどの警備だ。また、見回りついでに屋敷内での言伝などを預かって伝えたりすることもある。少し前に主である愛生の希望で主様担当執事となってからは以前より少し早く起きて、ルーティンを死守してきた。しかし、今日は少しイレギュラーだ。なぜなら、舞踏会が明日に迫り料理が追い込みの中、馬の管理兼料理補佐のバスティンが体調を崩してしまった。結果、急遽ルークが手伝う事になったのだ。とある事情から基本的に料理補佐は断っていたが、他の執事にも当たって断られた後だと聞いて断る訳にもいかず、渋々引き受けた。

「急に頼んだのにありがとな、ルーク。晩飯に鮭とキノコのグラタンつくってやるから、今日は忙しいかもしれねぇけどよろしくな!」

 デビルズパレスの料理人であるロノがルークに声を掛けた。ちなみに、何故お礼の晩御飯が鮭とキノコのグラタンなのかと言うと、そのグラタンがルークの大好物だからだ。

「仕事ですから。」

ロノは最初こそ素っ気ないルークをからかったが、その後はきっちり指示を出してくれたし、ルークはルークでロノの指示に従いながらテキパキとこなして行った。ロノは火を苦手とするルークを心配したが、言われた通りに調理していくルークをみて一安心した。その日の夜……

「じゃ、今から晩飯作ってやるよ。少し待ってろー。」

「わかりました。」

ルークは料理の参考にと作る工程を見ていることにした。それに気づいたロノが解説をしながら作り始めた。

「……んじゃあ、次は、鮭の仕上げだな。鮭をとびきり美味くする方法教えてやるよ。」

ロノはそう言うと鮭の入ったフラパンにブランデーを落とした。アルコールと熱が反応して炎があがる。ルークはその炎を見て、悪魔執事になる前のあるトラウマが蘇った。

「これはフランベと言ってだな ……」

ロノは料理に夢中になっていてルークの異変には気づいていないようだった。フランベの炎を見てからルークの足はがくがくと震え、視線はあの日のように遠くをみていた。

「やめろ……やめてくれ……。」

 呼吸がしづらくなってくる中、ルークはそんな言葉を口走った。

「んー?なんか言ったかー?」

料理を作っている途中でテンションの高いロノはルークの言葉が聞き取れず聞き返すも、ルークには聞こえていない。ルークの足は震え過ぎて限界が来たのか、近くの台にぶつかりながら倒れ込むように座り込んだ。そのとき、ぶつかった衝撃で金属製のボウルが落ち、その音でロノは振り返った。

「はぁ、はぁ、はぁ……あ、はぁ,」

ロノの目には汗をかきながら目を見開き、苦しそうに蹲るルークの姿があった。過呼吸を起こしているようだ。

「ルーク!おい、大丈夫か?!」

ロノが大きな声で語りかけるが、ルークはひたすらに忙しなく呼吸を繰り返しながら済まない、済まない、言い続けるばかりだ。そして突然気を失った。

「ロノ、ルーク、さわが……ルーク!!」

騒ぎを聞き付けたハウレスが呆れ顔で入ってくるが、違和感に気づき駆け寄った。

「ハウレス!ルークが突然こうなったんだ。どうすりゃいいんだ、」

 ハウレスは突然倒れたルークを前にして混乱しているロノをなんとか宥めると指示をだした。

「なんでこうなったかは後で聞く!とりあえずルカスさんの元に運ぶぞ!」


ー十数分後ー


「……なるほどね。」

ロノから経緯を聞いたルカスが頷いた。ルカスはこのデビルズパレスの医師だ。物腰柔らかで、外部との交渉も担っている。

「……やめてくれ……。」

近くのベッドにはルークが横たわりうなされている。

「料理すんのが楽しくってルークが火が苦手なのを忘れちまってました。俺の責任です。」

「ロノくんは悪くないよ。彼も今日は料理場の手伝いであること、料理場は火を使うものなのを理解した上でのことなんだから。」

ルカスは項垂れるロノに声をかけたが、それが気休めにしかならないのはルカス自身もよく分かっていた。なぜならロノはお調子者である反面、根は真面目で誠実な男である事を知っていたからだ。

「ほら、ロノくんは仕事に戻ろう。じゃないと、ルークくんが目覚めた時に自分を責めてしまうかもしれないからね。」

「それもそうですね、ルカスさん。あとはお願いします。また後でコイツに作ったグラタンだけ持ってきます。」

ルカスは待っているねとだけ答えて部屋を出て行くロノを見送った。その後、ルークをちらりと見た。相変わらずうなされている。

(私も詳しくは知らないけど……あのことは聞いているからね。繊細な時期にあんなことを経験したら悪夢もみるね。)

ルカスはルークの額に浮かぶ汗を拭ってやると仕事に戻った。


With you again someday

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