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私の名はルシフル。
西国の王だ。
我が国は、他国に比べて決して栄えているわけではないが、私の代まで貧しくも、国民共々支え合って平和を保ってきた。
私はこの国を愛している。
城下は商人たちが賑わい、夕刻まで人が絶えず、 多少のトラブルはあるものの、小さな火の粉のようなもので、大火になることは今までなかった。
城下町を抜ければ、農夫たちが長年開墾してきた広大な小麦畑が広がり、夏には金色の野原が風に吹かれて揺らめいている。
城下に降りることはほとんど無いが、子供達が、どこまでも自由に野原を駆け回っている光景を思い浮かべ、私も小さな大冒険に連れて行ってもらっている。
雨が降っている。
部屋は静まり返っていた。
夕餉を済ませ、会談が後半に差し掛かった頃、
アスランは、そのどこまでも真っ直ぐで、力強い目に静かな怒りを湛えていた。
「なぜだルシフル」
「、、、すまない」
「質問に答える事もできんのか貴様!」
「アスラン、、、私は」
「我が友よ、俺はお前ほど思慮の回る男を知らん!代々続いてきた両国の貿易を断ち切ること、それが何を意味するか、分からぬお主では無かろう!」
アスランは円卓が叩き割れるのでは無いかという勢いで私に迫った。
「聞いてくれアスラン、長年西の国、東の国、北の国、南の国の平和は続いてきた、 しかし、近年北の国がその均衡を崩し、南の国との貿易を断ち切り、防衛線を敷き始めたのだ。分かるだろう、始まるのだ戦争が 」
「 共に分かち合い、共に生き、困難に晒されようとも乗り越えるために、我らは同盟を結んだのでは無かったのか!」
「北の国、南の国の戦争が始まれば、我らの国の貿易路は危険に晒される。
両国の戦争に干渉すれば、
20年前、我が父が治めた戦争の大火が、我らの国に再び及ぶかもしれない。
決めたのだ、我らの道は別つべきだと」
アスランの顔が曇り、私に敵意とも取れる目を向け始め、力強くも静閑な声で続けた
「お前は穏やかな理想を持っていたが、決して臆病な男では無かったはずだ。
他国から理不尽な外交を迫られた時も、国民を守るために一歩も退かず、まるで大地に根を張る大樹のように踏み留まり、説き伏せて見せた。
誰だ、、、お前は」
そう言うとアスランは側近のジュドーを押し除けて、出て行った。
後日、ジュドーから鎖国の決定が伝達される。
心臓の鼓動が戦乱の始まりに警鐘を鳴らしていた。