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耀聖(ようせい)
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声良の書庫
35
ディヴァイの村でガルドと別れ、フィニス達は王都アクリムへと向かった。
「ルシオ」
「なんだ?」
道なりに歩きながら、ニティアがルシオに声をかける。
「ガルドさんと別れる時に何か渡してなかった?」
「よく見てるな……手紙だよ手紙」
「手紙?ヴェスパさんに?」
「そ」
話が聞こえていたフィニスが後ろから会話に加わった。
「女を口説くための菓子でも横流ししてもらってるのかと思ったわ」
「あのなぁ……俺がそんなことするわけないだろ……」
「……」
「……」
「え?」
沈黙する2人に驚くルシオ。
「はぁ?お前らそんなふうに俺を見てたわけ?!いや、アルテアちゃんなら分かってくれるよね!俺はもうアルテアちゃん一筋だし!!」
「……」
にこにこしたまま無言のアルテア。
「えぇ……」
アルテアの反応に肩を落とすルシオ。
そんな会話を聞いていたエラリスが、そんなルシオに声をかけた。
「ヴェスパ……あぁ、お母さん達に王都に行ったら尋ねるようにって言ってた人?」
「そう。俺の姉だよ」
少しだけ悲しそうに俯いたまま喋るルシオ。
「今は臨時的に城の参謀的なポジションにいて、国の復旧を手伝ってるらしいから、その立場を利用してエレノア達を守ってもらおうかなってね」
「ありがとう。お母さん達も体調がもう少し良くなったら王都に向かうって言ってた……ってゼフィリアから聞いた」
「家族で精霊と契約してると、そういう状況共有みたいなのができて便利だな」
落ち込んでるルシオの肩を叩くフィニス。
「他の精霊は分からないけど。多分ゼフィリアが少し特殊なんだと思うよ。中には力を貸してくれる時以外は表に出たがらない精霊もいるらしいし」
「精霊術師だから当然なのかもしれないけど……精霊のことよく知ってるのね」
「確かに……普通は契約できる精霊は1体……2体以上と契約するなんて……本来あり得ませんからね」
「そうなんだ。私のおばあちゃんも最後に会った時は4体と契約してたから、普通にできる人にはできるものだと思ってた」
「あ、そう言えば……たしかリヴァレーと契約する時もエルシアの孫?とかなんとか言ってたよね?」
「うん。エルシアは私のおばあちゃん。もう死んじゃってるけど」
ニティアが発したその名前を聞いて、フィニスが一瞬立ち止まる。
(ん?エルシア……?)
(どこかで聞いた……?いや、違う。見た気が……)
「どうしたのよフィニス。そんな難しい顔して」
振り返り、急に立ち止まって難しい顔をしているフィニスの顔を覗き込むニティア。
「……あ!!」
ビクッ!
「きゃっ!!なに!?びっくりさせないでよ!!」
モヤモヤしていたものがスッキリし、つい声を出してしまったフィニス。
「エルシアって確か!先生と一緒に黒い魔女と対峙した英雄のひとり……精霊術師のエルシア!?」
「ん?先生?英雄?」
フィニスの言葉に首を傾げるエラリス。
「あ、悪い。先生っていうのは俺とニティアを育ててくれた人で、”ジャヌス”っていう魔法使いなんだ」
「あー……確かそんな名前の人たちと冒険をしていたっていう話は聞いてたけど、魔女と戦ってたんだ」
「え……何よエラリス……自分のおばあちゃんのことなのに知らなかったの?」
「まぁ……私は殆ど会ったことないからね。おばあちゃんの話は殆どゼフィリアを通して聞いた話だし」
空を見上げ、昔を懐かしむような表情のエラリス。
「ん?確か……」
手を顎に添えて、記憶を遡るフィニスは、無意識に声が出ていた。
(先生達が魔女と戦ったのが50年前……その戦闘の傷で半月後に亡くなったって先生の手記に書いてあった……その祖母に会ったことがあるってことは……)
「ん?どうしたの?」
エラリスがフィニスに視線を向ける。
「あ!いや!何でも無い!」
「??……そう」
急に視線を逸らすフィニスに首を傾げながら歩くエラリス。
エルフの神秘を感じ、エラリスの背中を眺めながら王都までの道のりを歩いて行った。
コメント
1件
おお、第62話! 今回も面白かったです。ルシオが姉のヴェスパさんに宛てた手紙の話や、フィニスがエルシア(エラリスの祖母)の正体に気づきかけるシーン、特に「先生の手記にあった…」と引っかかるところが、世界観の奥行きを感じさせてグッときました。エルフの時間感覚と人間の違いが、さりげない会話の裏ににじんでいて、すごく良い味わいですね。ニティアとアルテアの無言の圧にルシオが焦る場面も好きです(笑)。続きが気になります!