初めて「石川祐希」と言う存在を知ったのはまだ4Kテレビも無い時やった。俺はまだ12歳でバレーも塁ほど好きじゃ無かった。要するに塁が楽しそうにやってるから俺もやるか、みたいな感覚。6歳から始めて、6年が経ってもいまだにバレーに心が湧き立たなかった。それでもどんどん身の回りはバレーで埋め尽くされて行くもんだから頭の何処かで「俺は多分これからもバレーは続けて行くんやろな」ってずっと思ってた。「続けるんだったら今努力した方が後々楽か、」みたいな事を12歳ながらも考えてた事を覚えてる。
ある日、塁に誘われて春高バレーを半ば強制的に見せられた。塁は齧り付く様にテレビを見ていて、俺はソファに座ったまま「早よ終わらんかな、ワンピース観たいな、」みたいな事を考えながらぼーっとしていた。
「ここでバックアタック石川祐希ー!」
そう実況の斉藤誠征が叫けんで俺はやっと試合をハッキリと見始めた。その石川祐希とやらはこの世に重力が無いと思わせる様に高く飛び、弓みたいに体をしならせてから「バン!」と画面の外まで飛び出る音でボールを叩いた。これには思わず塁と俺は口をアングリと開けたまま固まった。隣で父がそれを笑ってるのを横目に塁はただ
「凄いなぁ、、、俺達もあんな風になれるんやろか、、、」と、口から垂れ流してた。
「なるやろ、、、俺にだって、、、出来ると思うし、、、」
「負けず嫌いもいい加減にしときや」
「うるさいわ」
軽く塁をはたいてから視線をテレビに戻すとその「石川祐希」は雑な画面を通しても光輝いていた。ジャンプ三昧やから苦しいだろうにそれでも笑って、チームの励まし役になって、試合全部を引っ張ってた。
「こんな人とバレーしたら、、、**楽しい**やろな、、、」そう呟いたら塁は目を丸くしてからニカっと笑った。
「じゃあこの人ぐらい上手ならんと。」
その日から俺はバレーを続ける理由が出来た。
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