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私の身体は、博人じゃないと濡れない。
彼が経験豊富で女性を悦ばせることに長けていると、単純なことじゃなくて。
私の心が、光貴とつきあうその前からあの人に堕ちていたことが原因だ。
胸先の尖りを弄ばれた。舐め回されているのにお腹の奥が切なくなって、ダムが堰を切るように熱が溢れることもない。
ただ、淡白にその行為を受け取るだけ。
生理的な快楽を受ければ同じようになると思ったら大間違いだ。
罪の壇上で歌った経験があるから、なおさらその違いに驚愕する。
私の中から、なにも溢れてこない。
それにしても、光貴が突然こんなことをするなんて。
スタジオでうまくいかなかったのかな。先輩に囲まれているから、風当たりもキツイんかもしれない。やけを起こすほど、追い詰められているのかも。
光貴の様子は他にもおかしい所があった。私が抵抗できないように両腕を縛っているだけじゃなくて、パジャマのズボンも履いていたショーツもむしり取るように奪い去り、脚を割り開かされた。かなり乱暴な行為だった。荒れているように伺える。
普段温厚で優しい光貴のする行為ではなかったから、違和感しかない。
私が嫌がることは絶対にしないし、乱暴も一度だってされたことが無い。
どうしたのかな。
もしかして博人との逃避行を決行しようとしていること、気が付いている?
それで怒ってこんなことを? だから酔って荒れているの?
「あ、光貴、だめ、今…ローション、無いから……」
乾いた身体で光貴を受け入れるのは辛い。
思いとどまってくれないかな。
「気持ちよくなったら、ローションなんか要らんよ」
秘所に彼の指が伸びた。博人が触るとどうしようもない位に潤い、愛液が溢れるそこは若干湿っていた程度で、予想どおりほとんど濡れていなかった。
博人との圧倒的な愛の差を感じた。それが、私の罪の証のように思えた。
「…よくなかった?」
なにかを堪えるように光貴は私を見つめた。
それが傷ついているように思えてならない。
「あ、あの…起きたばかりで急だったし、そんなにすぐ準備はできないかな…」
誤魔化すように笑った。
ごめん、光貴。
もっと早く自分の気持ちに気付いていたら、光貴を苦しめずに済んだのに。
「じゃあ、僕が濡らすよ」
意地になったのか、光貴が花弁に自分の唇を押し付けて秘密の芯を舐めた。
唾液を絡ませ、指で摘んだり揉んだりして舌で転がされた。
「ん、んっ、光貴……ぁ」
なにも感じない愛撫――それは、私が光貴を愛してなかった罪の証。
それをはっきりと自覚した今、想像以上にショックだった。
付き合いも長くて、光貴のことは大事に愛していると思っていたのに、それが全くの偽りだったと思い知らされた。涙が溢れそうになる。
でも私に泣く資格なんか無いと唇を噛んで堪えた。
暫く弄られた後、光貴が私にのしかかってきた。
「お願いっ、ゴム付けて! まだ出産の時の傷も癒えていないし、このままだと感染症になっちゃうからっ。お願い……」
必死に懇願すると光貴は複雑そうに顔を歪めた。迷っていたが結局私の言う通りにしてくれた。
保身のために嘘をつくのが上手くなってしまったことにも罪を感じる。
理由が最低。
純粋に精神や体が辛くてお願いしたわけじゃないから。
博人との未来が閉ざされてしまうと思ったら、勝手に体が動いていた。
入口だけが唾液まみれになった体に光貴が沈み込んできた。繋がるとお互いにわかった。私の体内(なか)は、まるで光貴を拒絶するかのように、固く閉ざされていることに。
いつもは濡れているようにローションで誤魔化していたから、隠していた秘密が遂に暴かれてしまった。
「痛くない? 中、固いやん」
苦痛に歪んだ顔で、光貴が聞いてきた。
年下で幼い雰囲気があるかわいらしい顔で、太陽みたいに明るく私を照らしてくれていた光貴が、私のせいで、こんなにも顔を曇らせ、苦悶の表情を浮かべている。
「ん…っ、光貴、そんなことないよ。寝起きで調子悪いだけ。ちゃんと気持ちいいよ。いつも私を愛してくれてありがとう」
涙を見せないように気を付けて精一杯笑った。
こんな嘘をつくくらいしか今の私にはできない。
ごめんね光貴。
あなたも私の中で大切な人であることに変わりはないのに。
鈍い私は、自分の心の中の愛にまで種類が存在することを知らなかったから。