テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「…………」
「で、どういうことなの?今回のことは」
「…………ごめんなさい……」
「冬夜は俺の事を裏切ったって自覚、ある?」
「……あります……」
「じゃあさ、こういうことしちゃ駄目ってわかるよね?俺たちは家族でもあり、愛し合ってるんだからさ?」
《家族》
《愛し合っている》
この言葉は冬夜にとって、自分を縛り付ける呪縛の言葉だ。この言葉のせいで冬夜の心は壊されて、全て人に合わせるようになってしまった。
『抵抗しないと相手はもっと調子に乗るよ』
ふと、冬夜はいつか夏目に言われた言葉を思い出した。
(あれはどんな意味で言われたんだっけ……)
「冬夜、これからはさっきの男の子と帰るのはもちろん、学校で話すこともやめてくれる?あの子は俺たちのことを引き剥がす悪魔なんだから。」
怖いぐらい暖かい兄の言葉が、冬夜の頭で響く。
(僕はもう兄ちゃんに従うことは疲れたんだよ……どうしたら、伝わってくれるの?)
「わかった?冬夜?」
「…………ゃ。。 」
「聞こえないよ?」
(もういいや……)
「もう、兄ちゃんに従いたくない。兄ちゃんの顔色を伺って感情を閉じ込めたくない。ずっと我慢してたけど、限界です。」
「…………ねえ、今なんて言った……?」
「……もう、兄ちゃんから離れたい、です。」
「俺の、俺が、お前にしてきたこと、全部覚えてる?両親が死んでから、ずっとお前を育ててたんだよ?勉強しながら、家事もやって、バイトもして、幼いお前を育てていたんだよ?なのにそれを裏切るように離れたいって何?どういうこと?こんなにもお前に尽くしたことって、全部お前にとっては無駄だったってこと?お前を苦しめてたってこと?…………やっぱりさっきのあいつは、俺と冬夜の中を引き裂く悪魔だな。冬夜」
「…………………………」
「なんか言ったらどうなの?ねえ?」
「…………無駄では、ないけど、苦しかった。兄ちゃんの束縛が。さっきみたいな、夏目さんと帰るなとか、会うなとか。」
「…………そう。 」
「………………だから、僕はこの家を出ていっても、いいですか?」
───暫くの沈黙
「……それは……嫌、だよ。……ごめん……俺、自分ではそんなつもりないんだけど……やっぱり冬夜のこと、縛り付けてたか……いや、一応同僚とかに言われてたんだ……『お前結構過保護だな。縛りすぎないように気をつけろよ』って……」
「…………でも、それでも僕は兄ちゃんの元にいるつもりは無い。ごめんね。」
「大丈夫、わかってる。だけど今ここを離れて欲しくない。俺のわがままだってわかってるけど、せめて高校を卒業するまで、ここにいてくれないか?」
「………………わかった。」
「あと、冬夜には大学に進学して欲しい。わがままばっかりだけど、許して。」
「…………ありがとう……なんかごめん。こんなにも尽くして貰ってたのに、、」
「…………いいよ。まだお前と居れるし 、俺が冬夜を苦しめていたんだし。」
「……………………ありがとう……………………」
───夜
「おやすみ、兄ちゃん」
冬夜が寝ようとすると、兄が声をかけた。
「…………冬夜」
「何?」
「…………さっきの男の子のこと、冬夜はどう思ってる?」
「…………僕の心の鎖を解いて、暖かい世界を見せてくれた優しい人だよ。」
冬夜は微笑んで答えた。いつもとは変わった心の底からの懐かしい笑顔に兄は複雑な気持ちになりながら、
「そっか」
と答えた。
その様子に冬夜は、もういちど
「おやすみ」
といった。
「かんばってね。」
優しく、どこか切ない声色で怜央は、冬夜が歩いていった方向に言葉を呟いた。
コメント
3件