ぼんやりとした意識の中スマホの着信音が微かに聞こえる。薄ら開けるともう朝だ。
「んん、隆ちゃんスマホ鳴ってない?」
「あぁ、いいよ。放っておこう、今はまだ美桜とこうしていたいから」
一向に鳴り止まない着信音が物凄く耳障りだ。
「ああっ! 一回見てくる。ごめんな」
美桜の頬にチュッとキスを落とし重い腰を持ち上げる。寝室のドアを開け、目の前のテーブルの上で鳴り続けるスマホ。なんだか嫌な予感がする。この鳴り止まない着信音。しつこく鳴り止まない着信音。
(ま、まさかな……)
画面を確認する。【姫咲】と表示されている。
(あぁ、誰か夢だと言ってくれ……)
「隆ちゃん誰だったのー? ってお姉さんじゃん! 早く出ないと!」
「え、いや、これは出たら嫌な予感しかしない……」
「じゃあ私が出てあげる! あ、もしもしお姉さんですか? え! それは一大事!!! 直ぐに行きますからね!!!」
「え、ちょ! おい! 美桜!?」
「お姉さんが大ピンチなんだって! これは大事件だよ隆ちゃん! 作品に関わる大事件! すぐに行かなきゃ!」
「な……おい……まじかよ……」
チェックアウトまでイチャイチャする俺の計画は魔の電話によって壊された。まぁ、いいか。また家に帰ったら思う存分美桜を抱こう。
「隆ちゃん! 急いで準備してーっ」
完全に漫画のことで頭いっぱいの美桜の元気な声がスイートルームに響いた。
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