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第四十五章
崩れゆく信頼
―裏切りの夜―
かつて邪神を封じたとされる神殿跡地には、冷たい風が吹き抜けていた。
小さな火が揺れる。
その周囲には、疲れ切った巫女たちが身体を休めていた。
「……」
詞葉は火の番をしながら、静かに周囲を見渡す。
長い戦いの中で、誰もが傷ついていた。
煉華。
蒼紫。
琥珀。
そして――。
「羅刹さま。傷、見せてください」
少し離れた場所で、羅刹は壁にもたれながら座っていた。
「……ありがとうございます、玄武の巫女さま」
「無理をしていたんですよね…すみません。私を庇ったばかりに…」
詞葉は傷口へ手をかざす。
淡い光が広がり、傷が少しずつ塞がっていく。
「……」
羅刹は静かに詞葉を見る。
「優しいですね」
「え?」
「敵か味方か、それだけで判断しない」
羅刹は小さく笑った。
「あなたらしいです」
「……?」
詞葉は首を傾げる。
しかし、それ以上深く聞くことはしなかった。
しばらくして。
「今日はもう休んでください」
詞葉は立ち上がる。
「私が火を見ていますから」
「ですが……玄武の巫女さま。それは僕が」
「皆さん、疲れています」
詞葉は微笑む。
「少しでも休めるなら、それにこしたことはありません」
羅刹は一瞬黙った。
「……そうですか」
その言葉には、何の感情もなかった。
やがて。
夜はさらに深くなっていく。
火の音だけが静かに響いていた。
しばらくして、詞葉は羅刹へ水を渡すため、近くの水筒へ手を伸ばす。
「羅刹さま。お水です」
返事はない。
「……?」
眠っているのだろうか。
詞葉は水を持ち、ゆっくりと立ち上がる。
その瞬間。
背後に気配を感じた。
「――っ」
振り向くより早く。
背中に重たい衝撃を受けた。
「……」
身体が固まる。
「申し訳ございません」
耳元で、静かな声が響いた。
「玄武の巫女さま」
羅刹だった。
「……羅刹……さま?」
詞葉の声が震える。ゆっくり下を見ると腹から鈍く光る切っ先と自分の身体から流れる鮮血が見えた
「どうして……」
羅刹は目を伏せる。
「僕は……邪神さまに仕える者です」
「……」
「この命も、この力も、この忠誠も」
静かな声。
迷いはなかった。
「すべて……邪神さまのためにあるものです」
詞葉の身体から力が抜ける。
「……嘘……」
「申し訳ありません」
羅刹は淡々と告げる。
「あなた方を欺いたことだけは、謝罪します」
その時。
「……詞葉?」
背後から声が響いた。
交代で目を覚ました誰かが、異変に気づく。
「……何をしているの!」
羅刹はゆっくりと後ろへ下がる。
「……見つかってしまいましたか」
次の瞬間。
闇が羅刹の身体を包む。
「待って!」
声が響く。
しかし、伸ばした手は届かない。
「またお会いしましょう
四神の巫女さま方」
その言葉を最後に。
羅刹の姿は、夜の闇へと消えていった。
残されたのは――。
静かな夜と。
信じていた者に傷つけられた、詞葉の姿だけだった。
コメント
1件
うわあああマジで?!羅刹さまの裏切りに涙止まらんかった😭💔 詞葉ちゃんがあんなに信頼してたのに、まさか邪神の手先だったなんて…。静かな夜の描写から一転、刺されるシーンの衝撃がヤバすぎて心臓バクバクしたよ!!輪廻さんの引きが上手すぎて次が気になりすぎる…早く続き読ませてくださいっ🌸