コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【スピンオフ開始】
平安時代、陰陽師たちの中でも優れた才能を持ち、怪異を鎮めてきた男がいた。その名は安倍保名。彼は安倍家の当主として、名声を背負い、霊的な事件に立ち向かってきた。
保名は幼い頃から修行に励んできた。師匠である高名な陰陽師は、驚嘆しつつも、試練をもたらすことを予感していた。
師匠: 「保名、お前は生を受けた時から、宿命を背負っている。力を正しく使えば、人々を救うことができる。しかし、力に溺れれば、災いが訪れるだろう。」
保名: 「師匠、私はこの力を正しく使い、都を、そして国を護るために尽力します。」
保名はその後、陰陽師として事件を解決し、名声は広がっていった。ある日、彼は郊外で起こった事件に呼び出された。そこでは、村人が次々と原因不明の病に倒れていた。
現地に赴いた保名は、異様な気配を感じた。強力な妖気が漂っており、病の原因であることを察知した。彼はその妖気を追跡し、森の中に隠された古い祠にたどり着いた。
祠の中には、美しい女性が閉じ込められていた。その女性は、人間とは思えないほどの美と神秘を纏っていた。
保名: 「何者ですか?なぜ閉じ込められているのですか?」
女性: 「私は狐の化身、葛の葉です。陰陽師に封じられ、長い間閉じ込められていました。来てくれたことに感謝します。」
保名は話を聞き、葛の葉を封印から解放することを決意した。彼は慎重に祠の結界を解き、葛の葉を外の世界に連れ出した。
葛の葉は保名に感謝し、命を救われたことから心を寄せるようになった。一方、保名も特別な感情を抱くようになった。人間と妖狐の間に芽生えたこの禁断の愛は、二人にとって運命の歯車を回し始めた。
やがて二人は結ばれ、彼女との間に子を授かった。その子こそが、後に名高い陰陽師となる安倍晴明であった。
保名: 「葛の葉、子は、偉大な陰陽師になるだろう。子には、お前の力も私の力も受け継がれている。」
葛の葉: 「そうね、特別な力を持っているわ。でも、私はいつまでもあなたたちと一緒にはいられない…。私の存在が露見すれば、大きな災いが起こるかもしれない。」
葛の葉は自分の正体がばれることで、保名と晴明に危険が及ぶことを恐れ、密かに去ることを決意したのだろう。
ある夜、葛の葉は別れを告げることなく、屋敷を去った。愛する夫と息子を守るため、自ら姿を消すことを選んだのだった。
翌朝、保名は葛の葉がいなくなっていることに気付き、彼女が残した短い手紙を見つけた。
手紙: 「愛する保名、そして晴明。私はあなたたちと一緒にはいられません。しかし、私はあなたたちをいつまでも見守っています。どうか、強く生きてください。」
保名は悲しみに打ちひしがれながらも、決断を尊重し、彼女を探すことはしなかった。その代わり、彼は息子・晴明を育て、彼の陰陽師としての才能を磨くことに全力を注いだ。
それから数年が経ち、保名も歳を重ねていた。陰陽師としての務めを果たし続けたが、心中には葛の葉の影があった。彼女のことを忘れることはできなかった。
ある日、都を襲う強力な妖怪が現れ、再び保名はその退治を任された。老いてはいたが、実力は健在であり、妖怪を見事に退治した。しかし、戦中、致命的な傷を負ってしまった。
死の床に横たわる保名のもとに、晴明が駆けつけた。彼は父の最期を看取るために涙をこらえていた。
晴明: 「父上…どうか安らかにお眠りください。私はあなたの教えを守り、都を護り続けます。」
保名: 「晴明、お前は私と葛の葉の誇りだ。お前ならば、この国を…人々を護ることができる。私の分まで、強く生きよ…」
言葉を最後に、保名は息を引き取った。
そして、彼の魂は、遠くで彼を待っている葛の葉の元へと向かっていった。 彼の物語は、晴明の中で生き続け、次世代へと受け継がれていくこととなる。保名の勇気と愛、そして覚悟は、永遠に語り継がれることだろう。