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「お前なぁ……。神様ってのは、もっとこう、威厳とか奥ゆかしさとか、そういうもんがねぇのかよ」
「さてな。少なくともわしは、欲しいものは欲しいと言って手に入れる主義だ。……それがたとえ、異界から落ちてきた不遜な小僧であってもな」
「あっそ……っ」
いつもより素直すぎるその声色と、自分を射抜くような黄金の視線に、思わず鼓動が跳ねてしまう。
(クソッ。こいつはただ、消耗してフラフラなだけなんだ。弱った勢いで甘えてるだけで、別に深い意味なんて――……)
大体なんなんだ。「心が欲しい」って! 意味がわかんないだろ!
そんな言葉を、こんな、体温が混ざり合うような距離で吐かれたらどうしていいのかわからなくなってくるから困る。
(……ったく、神様ってのはみんなこうなのか? 呼吸するように口説き文句を吐きやがって)
心中で毒づいてみるが、顔の火照りは一向に引かない。それどころか、朱雀の指先が特攻服の生地をなぞるたび、その感触が肌に直接触れているような錯覚に陥って、背筋がむず痒くなる。
そんな煌の混乱を見透かしたように、朱雀が膝の上で小さく身悶えした。
「……童。お主の鼓動、さっきより速くなっておるな。わしの熱が移ったか?」
「あ、当たり前だろ! お前が湯たんぽみたいに熱いからだっつーの!」
「ふむ……そなたの言う”ゆたんぽ”が何かわからぬが、このように心地よいものだというのなら、わしも一つ欲しくなるな」
朱雀はクスクスと喉を鳴らすと、煌の膝に顔をすり寄せ、その温もりを吸い込むように目を細めた。
「……っ、やめろっつーの! それは道具の名前だよ、俺のことじゃねぇ!」
真っ赤になって抗議する煌だったが、朱雀を支える手だけは離せずにいた。
朱雀の髪から漂う、微かな|沈香《じんこう》のような香りと、肌を刺すような熱気。それが煌の冷静さをじりじりと奪っていく。
ふと、朱雀が動きを止めた。
先ほどまでの|揶揄《からか》うような色が瞳から消え、代わりに、底なしの孤独を湛えた黄金の光が煌を捉える。
「……童。冗談は、ここまでにしよう」
低く、地を這うような声。
朱雀は身を翻すと、煌の腰を抱きしめたまま、その顔をゆっくりと近づけてきた。
「身体は確かに、お主のそばにいるだけで救われる。だがな……。わしの内の火は、もっと深い、魂の交わりを求めて止まぬのだ」
至近距離で重なる、熱い吐息。咄嗟に、以前燕花から聞いた、朱雀解放の条件を思い出した。
魂の交わり。それって、つまり――……。