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「……っ、ちょ、朱雀! ちょっと待て……!」
逃れようと身を捩るが、腰に回された腕は鋼のように動かない。それどころか、朱雀は煌の抵抗を楽しむように、さらに深く、その巨躯を煌に押し被せてくる。
「待たぬ。今宵はな……。お主の全てを味わい尽くさん限り、この渇きは満たされぬだろうからな」
熱い指先が首筋を撫で、そのまま、心臓の鼓動がダイレクトに伝わる喉元をゆっくりと圧した。
まるで、そこに自分だけの「印」を刻み込もうとするような、所有欲に満ちた仕草。
「……っ、うあ……っ」
触れられた場所から、電撃のような痺れが全身に走る。
必死に抗おうとする煌の視界いっぱいに朱雀の黄金色の瞳と、乱れた紅色の髪が広がった。
朱雀は「愛しい」と言わんばかりに目を細め、ゆっくりと煌の唇へとその顔を寄せた。
(やば……。こいつ本気だ……)
今度は膝枕なんて可愛いもんじゃない。
完全に据わった瞳は獲物を定めた猛禽のように爛々としているし、腰に回された腕は逃がさないとばかりにギッチリとホールドされている。
冗談じゃない。
「ふざけんな! 今夜は寝ろっつっただろ!」
全力で腕を突っ張って押し返そうとするがビクともしない。
逆に両手をまとめあげられて枕元の装飾金具に括りつけられた。
(っ!? 何やってんだコイツは!)
「ふざけてなどおらん。欲しいものを手に入れるために最善を尽くしているだけだ」
「……っ! っのエロ鳥! 解け! 死ぬほど殴ってやるから解きやがれ!」
「ふむ。お主の拳骨もなかなかに甘美なものだがな……。だが生憎と、今宵はもう別の〝甘み〟を覚えてしまってな」
煌の額に、熱い息がかかった。
朱雀はくっくと低く嗤いながら舌先で煌の顎をなぞった。
「……っ」
その感触に背筋がゾワゾワして震える。全身の血液が沸騰しそうだ。
「童よ。お主の温もりも匂いもすべてわしのものだ。何ひとつ他の者になどやらぬ」
熱く濡れた唇が喉仏を這うように、吸い付くようなキスを落としてくる。ぞくりとした感覚が脊髄を駆け上がり、ぞわぞわと背筋が粟立った。
「……っ、ふ、ざけんな……っ、何言ってんだてめっ、俺は、お前の所有物じゃ……ねぇ……っ!」
必死に声を絞り出すが、拘束された手首が金具に触れて冷たく鳴るたびに、逆に自分の無力さが際立っていく。
朱雀の熱は、もはや「心地よい」なんてレベルを超えていた。内側から焼き尽くされるような焦燥と、それと表裏一体の、痺れるような快感が全身を支配し始める。
「いや、お主はわしの物だ。朱雀の巫女。――わしが数百年、孤独の淵で待ち焦がれた……唯一の番番」
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朱雀の低く掠れた声が、直接脳内に響く。
その言葉に含まれた重すぎる情念に、煌は息を呑んだ。「巫女」なんて呼び名、認めたくもないし、認めた覚えもない。それなのに、朱雀の黄金の瞳に見つめられると、まるでそれが最初から決められていた運命だったような錯覚に陥る。