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幼なじみとの両片思い

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幼なじみとの両片思い

19 - 夏祭り【1】

♥

20

2025年08月24日

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夏祭り


夕暮れ、商店街の奥から祭囃子が聞こえてくる。浴衣姿のまなみは、髪を高く結って、淡い水色の浴衣を揺らしながらそらとの方を見上げた。

「なぁなぁ、そらとー。うち、帯これで合っとる?」

「……似合っとるけん、いちいち聞くな」

「えー、ちゃんと見て言ってや!」

「見よるっちゃけど」

「ほんなら、可愛いって言って」

「は?」

「“似合っとる”やなくて、“可愛い”って」

不満げに唇を尖らせるまなみに、そらとは目を逸らしたままぼそりと呟いた。

「……可愛いっちゃ」

「ふふっ、ありがと」

そんな何気ない会話でも、そらとの耳はほんのり赤い。

露店を並んで歩いていると、まなみが知り合いに声をかけられた。

同じ大学の男子で、浴衣姿のまなみに嬉しそうに話しかけている。

「まなみちゃん、浴衣めっちゃ似合ってるやん!」

「ありがと〜!あ、これ伊予んとこのやけんね、柄可愛いやろ?」

「うん、すっごい可愛い!」

にこにこと笑って返すまなみ。

その横で、そらとは表情を固めたまま黙り込んでいる。

まなみは気づいていないけど、彼の手には力が入っていた。

男子が去った途端、そらとは無言でまなみの手首をつかみ、屋台の人混みから離れた。

「ちょ、そらと?!」

「……あんまヘラヘラ笑うな」

「え、なにが?」

「さっきのやつ。……あんな顔、俺以外にすんな」

「は、え?」

「“可愛い”って言われて、そんな嬉しそうにすんなっち言いよる」

低めの声に、まなみの心臓が跳ねる。

そらとは真剣な目でまなみを見下ろしていた。

「……そらと、嫉妬しよん?」

「……してねぇし」

「うそや〜、してる顔しとる」

「……黙れ」

そらとの耳は真っ赤だ。

それを見て、まなみはつい笑ってしまう。

「ねぇ、そらと」

「……なん」

「ありがと」

「は?」

「“うちだけ見とけ”って言ってくれたん、ちょっと嬉しかったけん」

そう言ってにこっと笑うまなみ。

その笑顔に、そらとの理性が一気に揺らぐ。

「……お前な、ほんま無自覚すぎ」

「え?なにが?」

「そうやって笑うけん、俺、他のやつの前で手ぇ離せんごとなるやろが」

言うが早いか、そらとはまなみの手をぎゅっと握り直した。

その強さに、まなみの頬も赤くなる。

「……帰り道、手ぇ離さんけん」

「……っ、うん」

遠くで花火が上がる音が響く。

まなみの胸も、そらとの鼓動も、同じくらい高鳴っていた。

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