テラーノベル
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東海林の一件から数日後、すっかり元通りになった街を目黒は歩いていた。
今日は休みだけれど何かをする予定もなく、散歩をしている。少し歩いて行くと、真正面から歩いて来る人物を見て、立ち止まった。
🖤「あ」
目黒の声に、その男性も立ち止まる。
「……おや」
抑揚も表情もない声が聞こえた。
そこにいるのは、ファントムと一緒にいた柊。
🖤「なんで、ここに……」
「……ただの散歩ですが」
🖤「え、散歩?」
「あなたこそ、何故ここに?」
🖤「散歩だけど」
沈黙が降りる。
🖤「……一緒に、行きます?」
「……断る理由もありませんし、まあいいでしょう」
そのまま歩き出し、街中から出て並木道を横並びで歩いて行く。
「……警戒しないのですね」
🖤「……阿部ちゃんが、悪い人じゃないって言ってたから。それに、俺もちょっとあなたのこと見てたし。あなたはずっと、阿部ちゃんの負担にならないようにしてた。だから今すぐどうこうしようってことは、ないです」
「目的が傷つけることではなかった、というだけですよ」
🖤「それでもいいです。あ、阿部ちゃん、あのタブレット喜んでましたよ。約束、守ってくれたって。持ち運びはラウールの使ってるけど、それ以外はあなたのタブレット使ってます」
「それは、用意した甲斐がありました。自分のデータを見せてくれなど、妙な方です。しかもあの状況で」
🖤「ああ、阿部ちゃんはそうだろうね。自分の状況より、興味の方が勝つから……阿部ちゃんのデータって、今も持ってます?」
「……あなたも興味がおありで?」
🖤「もちろん。あるなら見たい」
「阿部亮平に言えばいいじゃないですか」
🖤「言えると思う? 阿部ちゃんに、阿部ちゃんのデータ見せてって。変な奴だと思われたくないし」
「……それもそうですね。いいでしょう」
立ったまま見るというのも違うと思い、外苑のお堀近くに設置されたベンチに横並びで座った。
肩から下げていたチャコールグレーのショルダーバッグから、ブルーグレーのタブレットを取り出して電源を入れて操作する。
画面にデータを表示させると、目黒に差し出してくれた。
🖤「へぇ……結構、細かく取ってあるね」
「行動パターンの分析用ですから」
🖤「起きてすぐ、もう探ってる。阿部ちゃんらしい」
「なんの迷いもなく動き回っていて、驚きましたよ」
🖤「戸惑ったりしないよ、阿部ちゃんは。まあ、慣れもあるんだろうけど」
「慣れ、ですか?」
🖤「阿部ちゃんって、結構、拉致されたり誘拐されたり、危険な状況になること多くて。ふっかさんが言ってたけど、阿部ちゃんは巻き込まれ体質らしい」
「ふむ。体質ですか。それはデータにありませんね」
🖤「そりゃそうでしょ。一回見ただけじゃ分かんないよ。阿部ちゃんのデータって、まだとってんの?」
「ええ。とても興味深いので。これは個人的なものですが」
🖤「捕まってる間、阿部ちゃん、なんかしてたの?」
「歌を歌っていました。それと、こちらを見て会釈」
🖤「ああ、阿部ちゃんぽい。阿部ちゃん、自分が思ってるより歌が好きなんだよね。じゃあ、聴いたんだ。いつもは低い阿部ちゃんの、歌う時だけ高くなってキレイな歌声」
「そうですね。話す時とは違っていて、どう出しているのか気になりました」
🖤「阿部ちゃんの歌い方はちょっと独特なんだよね。阿部ちゃんと同じように出すのは、俺も難しい」
「なるほど」
🖤「ちなみに阿部ちゃん、何、歌ってたか分かる?」
「曲は知りませんよ。ただ、眠るとか浮かんだ影とか、そんなことは言っていましたが」
🖤「あ、SERIOUSだ。ははっ。柊さん、それ、阿部ちゃんにからかわれてたんだよ」
「……どういう意味でしょう?」
🖤「SERIOUSって、おばけ目線の曲なんだよ。気付いてくれるかな、ゾクゾクするよって、ちょっと楽しそうなんだよね。阿部ちゃん、柊さんに分かんないように電脳空間いってたから、試してたんじゃないかな」
「……なんだか、腑に落ちませんね」
🖤「阿部ちゃん、そういうとこあるんだよね……他になんか知りたいことある? 教えられる範囲でいいなら、答えられるけど」
「……では、あなたが知っている阿部亮平について」
🖤「範囲広っ。長くなるけど、いい?」
「構いません。今日は特に用事もありませんから」
🖤「じゃあ」
そこから、目黒による阿部講座のようなものが始まり、柊は「なるほど」「そういうことですか」と呟きながらタブレットにメモを取っていた。
しばらくして。
💚「あ、めめ!」
聞き慣れた声に振り返れば、そこには阿部の姿があった。
💚「こんなところにいたんだ」
🖤「阿部ちゃん? 何かあった?」
💚「もう。スマホ、何回鳴らしても出ないんだもん。心配したよ」
🖤「あ……話に夢中で気付かなかった」
💚「珍しいね、めめがそんなに夢中になるの……って、柊さん!?」
「……どうも」
💚「え、なんで、柊さん? ってか、めめと並んで座って、何してんの?」
🖤「街で会って、一緒に散歩してた」
💚「……うーん、いろいろツッコみたい。あ。柊さん、タブレット、ありがとうございました。気に入って使わせてもらってます」
「いえ。約束は守る主義なので」
💚「ふはっ。ホントに律儀だね……で、二人で何の話してたの?」
🖤「阿部ちゃんについて」
💚「……はあ?! え、ちょ、なにそれ!?」
「阿部亮平について、貴重なデータをいただきました」
💚「いいよ、そんなの! ってか、なんでめめが情報あげてんの!?」
🖤「楽しかったよ。俺もいろいろデータ聞けたし。あ、また今度、連絡します」
「お待ちしてます。こちらでも、整理して考察しておきますね」
💚「……仲良くなるのはいいけど、なんか、複雑……」
目黒と柊さん。
どうやらこの二人、似た者同士のようです。
コメント
2件
素敵な💚オフ会みたいです🤣
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