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昨夜までの、節度を守る「紳士な騎士」の仮面は、もうどこにもない。
今の彼の声には、隠そうともしないドロドロとした独占欲と
私を完全に掌握しているという余裕が、恐ろしいほどの色気と共に滲み出ていた。
「メリッサ様、貴女が何を恐れ、何から逃げようとしているのか、僕には分かりません。ですが──」
手袋を嵌めた大きな手が私の頬を優しく
けれど拒絶を許さない力強さでなぞり、ゆっくりと私の顔を上向かせる。
至近距離でぶつかったレオン様の瞳は
深海のように暗く、それでいて私を焼き尽くしそうなほど狂おしい熱を孕んでいた。
「──貴女が僕を拒めば拒むほど、僕は貴女をこの腕の中に閉じ込めておきたくなる。その滑らかな肌も、甘い声も、全て僕だけのものにしてしまいたい……他の誰にも見せたくないんです」
囁かれる言葉は、最高級の蜂蜜のように甘く蕩けていて
それでいて逃げ場を塞ぐ猛毒のような執着心を孕んでいる。
「レ、レオン……っ、? 落ち着い、て……っ、お願いだから、いつもの冷静な貴方に戻って!」
「僕は至って冷静ですよ。むしろ、今が一番頭が冴えている。……マリン様が背中を押してくれたんです。『お二人はとてもお似合いだから、早く幸せになってください』と」
「えっ?! マリンが……!?」
私の混乱を余所に、レオン様の追撃は止まらない。
「それに……マリン様に僕のことを熱心に語っていたのも、僕への愛の告白───つまり両思いと受け取ってよろしいんですよね」
「あ、あれはオタ活っていうか、布教というか……!」
「布教? よく分かりませんが……まあいいでしょう。逃がすつもりはありませんから」
レオン様はそう言って、私の指先を掬い上げると
躊躇いなく、その節くれだった唇に触れさせた。
指の関節、そして爪先まで丁寧に舌でなぞり、ちゅ、と官能的な音を立てて口づける。
「んんっ……や……っ! 指は、だめっ……!」
指先から脳へと直接伝わる彼の湿った感触と熱に、思わず身悶えしてしまう。
逃げようとしても、私の体は彼の腕という名の檻の中でがっちりと固定されて動けない。
「抵抗しても無駄です。僕の腕の中で大人しくしているのが賢明ですよ、メリッサ様」
「お、お願い、レオン……! どうか冷静に……」
「言ったでしょう。僕はこれ以上ないくらい冷静ですよ。ただ、貴女のことが欲しいだけなんです。……理性が焼き切れるほどにね」
レオン様はさらに顔を寄せてきて、今度は私の額に
慈しむような、けれど重苦しいほどの優しさでキスを落とした。
額から唇が離れると同時に、再び低い声が私の耳を責める。
「貴女は知らないかもしれませんが……僕はもう長い間、貴女だけを見ていたんですよ」
「他の男に微笑む貴女を見るたび、どれほどその男を斬り捨てたい衝動に駆られたか。……ずっと、こうして貴女を独占する機会を探していました」
その告白が、鋭い楔となって脳天に突き刺さる。
ゲームの中では知り得なかった、隠された設定……
いや、私の行動が引き起こした「現実」。