フィクションです。
第一話
「若井」
「…」
「わーかい」
「…」
「…え、僕何かしちゃった?わかい…? 」
「何でもない」
「何でもないならなんで…」
「ごめん。」
若井はそう言い残してダッシュで走り去って行った。
近所の公園とはいえ僕たちはデートをしていたはずで、えーっと…端的に言うと置いていかれました。
…僕何かした?若井の癪に障るようなこととか言っちゃったかなぁ…
家までの帰り道を一人とぼとぼ歩く。
ぼんやりとしていたせいか地面の窪みに躓いてしまった。
「ッたぁ……」
ダサい。あまりにダサすぎる。誰にも見られてないといいなと思って軽くあたりを見回す。
「あ」
「大丈夫?元貴」
「…えーっと」
「怪我してない?」
「だ、大丈夫。…なんでいるの?」
「いや普通にランニングしてて。誰か盛大に転んだなーって思ったらまさかの元貴だった。」
「ごめん、ちょっとぼーっとしてて…」
「元貴らしくないねぇ…ってちょっ、どうした?泣いてる…!?」
「…涼ちゃん、僕若井に嫌われちゃったかも」
「何があったの?」
長々と立ち話をするのも何なのでとりあえず僕たちの家に来てもらった。
先に家に帰ったと思っていた若井はそこにいなかった。むしろ今はありがたい。涼ちゃんに説明するには好都合だ。
「さっきまで二人で公園に行ってたのね」
ソファに腰を下ろしながらことの経緯を説明する。改めて思い返してみても僕に否はなかったはずだ。
「…心配だな。」
涼ちゃんがぼそりと呟く。
「若井?」
「うん。普段の若井が元貴にそんな態度取ることは絶対ないでしょ?…元貴が一番分かってるとは思うけど」
「だから僕何かしちゃったんじゃないかと思って…涙」
「元貴が何かしたとしてもそのくらいじゃ離れて行かないよ、若井は。」
…は?
「そんなの分からないじゃん!!!」
若井の事は十数年横にいる俺が一番よく 知ってる……親友で、恋人の俺が。涼ちゃんに何が分かるって言うんだよ…
「元貴は知らないと思うけど、若井って元貴のことしか頭にないよ。…僕と二人の時はずーっと惚気聞かされてるんだから。」
「え、恥ずかし…」
「だから元貴が自覚すらしてないような些細なことで離れていくなんて絶対ありえないから!僕が保証する!!…理由は何か別にあると思う。」
「…そうなのかなぁ」
自分の知らないところで自分の話をされていることに恥ずかしさと嬉しさを覚えつつ、少しずつ自分の中の不安な気持ちが抜けていくのを感じる。さすが人柄キーボード涼ちゃん。本当に精神安定剤。
\ピロン/
\ピロン/
僕たちのスマホが時間差で鳴った。
続きます。
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