テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「第二章 銀河の旅路」
竜〈奈落喰らい〉を討ってから、幾つの星を渡っただろう。
銀河は思っていたよりもずっと広く、色も、形も、匂いも、それぞれに違っていた。
赤く輝く海を持つ惑星〈アドリア〉、雲が地表を覆い夜明けが来ない衛星〈ルーナ・ノクス〉、そして天空を漂う巨大な水晶都市。
どこも一度として同じ風景はなく、訪れるたびに新しい脅威と、新しい物語が待っていた。
水の星での邂逅
ある日、あなたとセレスティアは海洋惑星〈ネレイア〉を訪れた。
この星の大陸はほんのわずかで、ほとんどが青く透き通った海に覆われている。
港町で船を降りると、潮の香りとともに、子どもたちの笑い声が響いた。
「珍しいな……この星、平和そうだ」
あなたが呟くと、セレスティアは首を傾げた。
「表面はね。でも――あそこ」
視線の先、沖合で水面が渦を巻いていた。
次の瞬間、巨大な影が現れ、空へと飛び上がる。
それは鯨にも似ていたが、背中には無数の鋭い水晶が突き出していた。
町の人々が悲鳴を上げ、鐘が鳴り響く。
「海の守護獣〈グランティス〉……本来は温厚なはず。暴れているのは誰かに操られている証拠よ」
あなたは即座に星剣を呼び出し、セレスティアと共に海へ飛び込んだ。
水中では重力が緩み、刃は流星ではなく光の波を描く。
渦の中心に潜り込むと、〈グランティス〉の胸元に赤い結晶が埋め込まれているのが見えた。
「これを砕けば!」
あなたは刃を振るい、結晶を真っ二つに切り裂いた。
直後、獣の瞳から濁った光が消え、静かに深海へと戻っていった。
港町では人々が歓声を上げ、あなたとセレスティアに感謝を述べた。
だが、彼女の顔は少しだけ曇っていた。
「……赤い結晶。あれは自然のものじゃないわ」
赤い月の予兆
旅を続けるたび、その赤い結晶を目にする機会が増えていった。
それは獣の体内だけでなく、遺跡や廃墟、そして星の空にまで現れ始める。
ある夜、船の甲板で空を見上げたあなたは、違和感に気づいた。
――そこには、一つの赤い月があった。
以前はなかったはずのその月は、静かに、しかし確実に大きくなっている。
「……始まったのね」
セレスティアの声はかすかに震えていた。
あなたが理由を問おうとした瞬間、彼女は視線を逸らし、短く言った。
「このことは……まだ話せない」
赤い月の光は海を染め、夜の空気を冷たく変えていた。
その光の下で、あなたは初めて、セレスティアの背に宿る銀河の翼が揺らぐのを見た。