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翌日の朝。
目を覚ますと、まずスマートフォンを手に取った。
昨日のメッセージを開く。
『また韓国にいる間に、時間が合ったら会おう』
その文字を見ただけで、自然と頬が緩んだ。
「……今日、会えるのかな」
昨日の時点では、まだはっきり決まっていなかった。
でも――
少し期待してしまう。
そんなことを考えていると、スマートフォンが震えた。
「……!」
画面を見る。
ヨルからだった。
『おはよう』
「……おはようございます」
小さく呟きながらメッセージを開く。
続いて届いた文章を見て、私は固まった。
『今日、時間ある?』
「えっ……」
思わずスマートフォンを握り直す。
『はい。あります』
送信。
すぐに後悔する。
「早すぎたかな……」
でも、数秒後。
『よかった』
そして、
『よかったら、一緒にご飯食べない?』
「…………」
一瞬、何も考えられなくなった。
「ご飯……」
これって。
デート……?
いや、まだ違う。
ただご飯を食べるだけ。
そう思おうとする。
でも、顔が熱くなる。
『はい……!』
送信。
「……あ」
思わずスマートフォンを見つめる。
「『はい……!』って、嬉しすぎるでしょ……」
恥ずかしくなって、枕に顔を埋めた。
⸻
待ち合わせ場所が決まった。
ヨルが送ってくれた場所を確認する。
『ここで待ってるね』
『分かりました』
『ゆっくり来てね』
「……優しい」
また頬が緩む。
準備をしながら、何度も鏡を見る。
「これで大丈夫かな……」
服を選んでは迷う。
髪を整えて、また鏡を見る。
「……普通にしよう」
そう思っても、今日会う相手は普通の人ではない。
12年間好きだった人。
昨日まで画面の中にいた人。
それが今日は――
私と二人でご飯を食べる。
それだけで緊張してしまう。
⸻
待ち合わせ場所に着く。
周囲を見渡す。
まだヨルはいない。
少し安心したような、残念なような。
そのとき――
「……!」
少し離れた場所に、見覚えのある姿が見えた。
ヨルだった。
昨日とは違う服装。
帽子をかぶって、静かにこちらへ歩いてくる。
目が合う。
ヨルが笑った。
私は反射的に頭を下げた。
「こんにちは」
ヨルはスマートフォンを取り出す。
『こんにちは。待った?』
「いえ、大丈夫です」
『よかった』
そして、少し照れたように、
『今日も会えたね』
と画面を見せてくれた。
「……はい」
たったそれだけなのに、嬉しい。
⸻
二人で歩き始める。
どこへ行くか話しながら、ゆっくり街を歩く。
ヨルが何か話している。
私は一生懸命、表情を見る。
でも、途中で聞き取れないところがあった。
「……ごめんなさい。今、何て言いました?」
するとヨルは、すぐに立ち止まった。
スマートフォンを取り出す。
『このお店、気になってたんだけど、入ってみる?』
画面を見て、私は笑った。
「はい。行ってみたいです」
ヨルも笑った。
無理に聞き取ろうとしなくてもいい。
分からなければ、文字で確認できる。
そのことが、少しずつ安心につながっていった。
⸻
お店に入る。
向かいの席に座る。
メニューを開きながら、ヨルがスマートフォンを見せる。
『何食べたい?』
「うーん……迷います」
『僕も』
「ヨルさん、いつも何食べるんですか?」
『僕?』
「はい」
『それは秘密』
「えっ?」
思わず笑ってしまう。
『冗談だよ』
「もう……」
思わず笑いながら、メニューで顔を隠す。
ヨルも笑っている。
その瞬間、
「あれ……」
昨日よりも自然に笑えている。
昨日は緊張して、何を話していいのか分からなかった。
今日は少し違う。
まだ緊張はする。
でも、
楽しい。
⸻
食事をしながら、少しずつお互いのことを話した。
好きな食べ物。
好きな場所。
休日の過ごし方。
そして、EXOのこと。
「私、昔のEXOもすごく好きなんです」
ヨルが笑う。
『知ってる』
「え?」
『12年って言ってたから』
「……あ」
また恥ずかしくなる。
「そんなに言いましたっけ?」
『何回も聞いた気がする』
「……恥ずかしい」
顔を伏せる。
ヨルが笑う。
『でも、嬉しいよ』
その文字を見て、私は顔を上げた。
「……本当に?」
ヨルは頷く。
『うん』
その瞬間、胸が温かくなった。
⸻
食事のあと。
二人で街を歩く。
夕方になり、空が少しずつオレンジ色になっていく。
ふと、ヨルがスマートフォンを見せた。
『どこか行きたいところある?』
私は少し考えてから答えた。
『夜景が見たいです』
するとヨルは、少し嬉しそうな顔をした。
『俺も夜景、好き』
「……え?」
思わず顔を上げる。
『あと、海も好き』
「海も?」
『うん。海を見るの好きだよ』
私は思わず笑った。
「私も海、好きです」
ヨルが少し驚いたようにこちらを見る。
『本当に?』
「はい。海も、夜景も好きです」
『一緒だね』
その文字を見た瞬間、胸が少しだけ高鳴った。
「……一緒だ」
思わず小さく呟く。
ヨルは笑って、
『じゃあ、今日は夜景を見に行こう』
とスマートフォンを見せた。
「はい」
二人並んで歩く。
まだ恋人ではない。
手も繋いでいない。
でも――
好きなものが一つ、また一つと重なっていく。
⸻
夜景が見える場所に着く。
目の前に広がる街の明かり。
私はしばらく言葉を失った。
「……綺麗」
ヨルも隣で夜景を眺めている。
そしてスマートフォンをこちらに向けた。
『やっぱり夜景っていいね』
「はい」
『俺、こういう景色好きなんだ』
「私もです」
『海も好きだから、今度は海にも行きたいな』
「……海?」
『うん。海を見ながらゆっくり話すのもいいなって』
私は思わずヨルを見る。
「……行きたいです」
言ってから、急に恥ずかしくなる。
「……あ」
ヨルが笑った。
『じゃあ、今度ね』
「はい……」
また顔が熱くなる。
今度。
その言葉が、妙に嬉しかった。
⸻
少しして、私はスマートフォンを取り出した。
『今日、すごく楽しかったです』
送信。
ヨルは画面を見て笑った。
そして、
『俺も楽しかった』
と返してくれた。
少し間を置いて、
『また会いたい』
その文字を見た瞬間。
胸が大きく跳ねた。
「……また……」
思わず呟く。
ヨルが笑う。
『嫌?』
「違います!」
慌てて首を振る。
「嬉しいです……」
言ってから、恥ずかしくなった。
「……あ」
顔が熱い。
ヨルはそんな私を見て、優しく笑っていた。
『じゃあ、また会おう』
私は小さく頷いた。
「はい」
⸻
帰り道。
私はスマートフォンを何度も見返していた。
今日の写真。
今日のメッセージ。
今日、ヨルと過ごした時間。
全部が夢みたいだった。
ホテルに着き、部屋のドアを閉める。
「……今日、デートだったのかな」
そう呟いた瞬間、また顔が熱くなる。
「……やっぱり恥ずかしい」
ベッドに座り、スマートフォンを眺める。
すると――
新しいメッセージが届いた。
『今日はありがとう』
「……こちらこそ」
返信しようとした、そのとき。
もう一通。
『実は、今日会う前から少し楽しみにしてた』
「…………え?」
指が止まる。
何度も読み返す。
「……これ、どういう意味?」
胸がドキドキする。
12年間好きだった人からの言葉。
まだ「好き」と言われたわけじゃない。
でも――
昨日までとは、何かが少し違う。
私は迷いながら返信する。
『私も……楽しみにしてました』
送信。
すぐにスマートフォンを伏せる。
「……恥ずかしい!」
枕に顔を埋める。
しばらくして、恐る恐る画面を見る。
既読。
そして――
『よかった。また連絡するね』
その短い言葉に、私は思わず笑った。
まだ恋人ではない。
まだ何も約束していない。
だけど、
「また会える」
その未来が、昨日より少しだけ現実になった気がした。
そして――
次に会う場所は、
二人とも好きな「海」。
その約束が、
二人の距離をさらに近づけていくことになる。
第4話 終
コメント
1件
きゅうりさん、第4話読みました…! 「今日会う前から少し楽しみにしてた」って、もう、その言葉が重すぎてやばいです…😭💘 12年片想いしてきた相手にそんなこと言われたら私だったら心臓止まります。 夜景を見ながら「一緒だね」って言えるの、すごく尊いです。手も繋いでないし恋人でもないのに、少しずつ好きなものが重なっていく感じがすごく丁寧に描かれてて、読んでてドキドキしました。 次は海ですね…二人の距離がどんどん近づいていくのが本当に楽しみです🌙💫
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ひな
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