(川の音、風で木の葉が揺れる音、服越しでもわかる少しひんやりとする雑草の感覚 、まぶたを閉じていても見える光…転生…したのかな?)
先ほどまで意識がぼんやりとしていたが今ははっきりとわかる
ゆっくりと目を開けると…そこには知らない天井が…ということはなく5メートル位の高さの木だった
(うっ 木漏れ日が眩しい…)
体を起こし 辺りを見渡すと周りには一本も木がなく所々に野花が咲いた草原が遠くまで広がっていた
ふと、自分の体の横においてある木箱と袋に目が行く
「神様が言ってたマスケットかな?……ん?声が…高い?」
転生前の声は同年代と比べてもかなり低く 友達と数メートル離れただけて声が聞き取りずらいと言われた事もあった 今の声は男性にしては高く女性にしては少し低い…そんな声だった
「転生したんだから声が変わるのは当たり前か…さて マスケットを確認するか」
木箱の中身はマスケット、火薬と弾丸を入れるポーチ リロードやメンテナンスのやり方が書かれた紙 銃剣だった 袋の中身は50発分の火薬と弾丸、それに神様からの手紙だった
『無事転生できたようだね 君の姿は君が読んでいた漫画の主人公の姿に似せてみたよ 気に入ってくれたかな? それとマスケットとは別に君がよく使っていた懐中時計をポケットの中に入れておいたよ 異世界での生活頑張ってね by神様』
ポケットの中を確認してみると確かに10歳の誕プレで姉から貰ったねじ巻き式の懐中時計が入っていた
「ありがとう神様ー!」周りに人がいないことを確認して叫ぶ
荷物を持って街を探して歩き始める
(さっき確認したら身長や顔つきなんかも9歳前後みたいな見た目だったし設定考えてた方がいいかもなぁ)
来夢の格好はカーキ色のマウンテンパーカーにジーンズのズボン 黒のスニーカーといった格好 髪型は
男性にしては長めの髪でつむじのあたりからは見事なアホ毛が立っていた
遠くの方に森が見えた途端 一つの不安が頭によぎる
(あっ…食料!そういえば食料持ってない!せっかく異世界に来れたのに人にあえずに餓死とか絶対に嫌だ!)
来夢の向かってゆく場所はただ一つ 食料がありそうな遠くの森だった