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人間は、生まれながらにして二種類に分けられると、鷹取明日奈は思っている。
必要とされる人間とされない人間の二種類だ。
鷹取詠史が生まれ、可愛がられたときに明日奈は、自分の大切な居場所が奪われる危機感を抱いた。ひとつ年下の従兄弟。愛くるしい天使のような赤子で、敵意を持つはずの明日奈でさえもいっとき魅了された。
鷹取の家系は目が細いのが特徴的だ。それに比べて、詠史は、母親譲りの、くっきりとした二重まぶた、宝石のような瞳に、陶器のような白肌が印象的だった。
たとえば西洋映画で見かけるようなまさに天使のような存在。それが鷹取詠史だった。誰もが一度彼を見ればはっ……と息を飲む。
ただ、鷹取の一族に、しらけたムードが漂っていたのは事実だ。鷹取の血筋とは思えない、くっきりとした顔立ちは、鷹取とは元々血縁関係のない、母親の有香子を見ているようで。鷹取の一族は内心では詠史の美しさに魅了される一方で、詠史を見下していた。見下すことで憂さ晴らしをしていることに彼らは無自覚であった。
その差別を加速させたのが明日奈だ。彼女は、最初のうちは、可愛いねえ、と詠史を可愛がるふりをしてはいたが。段々、みなの注目を集め、世話を焼かれるのが詠史となり、いままでの世界の中心が自分だったはずなのに。大切な領域を奪われ、踏みにじられた感覚を覚えた。
その感情を、昇華させるのでもなく、発散させるのでもなく、明日奈は、ぶつけることで対処した。詠史は、ひとを疑うことのない赤子で、親族の見ていないところで彼をつねって泣かせたり。なにも対抗出来ない詠史を見ていじめては、いい気味だと愉悦に浸った。
やがて詠史も成長し、段々、誰が、なにをしているのかをわかるようになってくる。そのはずなのに、明日奈のかけた簡単な罠に引っかかり、いつも大人に、いやぁねえ、これだからあの子は……と眉をひそめられる。
それが、明日奈には快感だった。
見た目に対する嫉妬。生まれながらに満たされたビジュアル。たとえ、ひとが欲しいものを手に入れていたとしても――明日奈は結論する。
鷹取詠史は、必要とされない人間で、必要とされているのは自分なのだと。
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