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ーー
壮大な麗ちゃんの話を聞き、私は何も言えなかった。
麗ちゃんは月明かりに照らされて静かに泣いていた。
「だからね、今隣に椛がいることが、本当に幸せなの」
私がよく見る夢を思い出した。
火に囲まれて、小さな女の子が泣いている夢。あれは麗ちゃんだったのか。
「私はどこにも行かないよ…」
気が付くとそう口に出し、麗ちゃんを抱きしめていた 。私の意思では無かった。体が勝手に動いたのだ。過去の私はそれだけ麗ちゃんを守りたかったのだろう。今度は自分の意思で麗ちゃんをぎゅっとした。
「ほんと?」
「うん。」
ほんと?と問う声は年相応の幼い声だった。私も、麗ちゃんに何かしてあげたいと思った。だけど何も思いつかない。
麗ちゃんは大声で泣き始めた。初めて会った時(麗ちゃんからしたら再開した時)よりも激しく泣いた。
泣いて、泣いて、泣きまくって、麗ちゃんは眠りに落ちた。
麗ちゃんが目覚めた後家に帰り、眠ると久々に夢を見た。
ー神社…おそらく御上神社だけど今と比べると随分綺麗だ。それで私は夢だと気付いた。
明晰夢、というのだろうか。私はしたいように体を動かすことができた。でも、そこにあるものには干渉できず、ただ見ることしかできなかった。
ー朧月のようなやんわりとした光が、炎を丸め込んで神社の中にある蔵の中に入れて封印した。
どれだけ待ったのだろうか。1人の男が神社へと登ってきて、蔵にあるお札を剥がして手を合わせた。声は聞こえないけれど、口を動かしている。私は直感的に、麗ちゃんを買った村人だと思った。
その村人の胸に、赤黒く淀む炎が飛び込んだ。
村人の顔付きは変わり、優しそうな表情が険しくなった。
そして、不適な笑みを浮かべたのだ。
ーー場面は変わり、村人が村の斬首台に縛られていた。
そういえば、麗ちゃんは村人が殺人を繰り返したと言っていた。
落とされた首の付け根から、先ほどの赤黒い炎が出てきた。村の人たちは気が付いていなかった。
炎を追いかけると、見覚えのある小さな家を見つけた。そして、窓から中を見ると私と麗ちゃんが楽しそうにみたらし団子を食べていた。胸がざわざわする。私はこれから何が起こるのか知ってしまっているのだ。
声は届かないと分かっていたけれど、私は必死に叫んだ。
『にげて!!!はやく!』
叫んでいるつもりだが、きっと声は出ていないだろう。
家の端に火が付いた。
ああ、火事の原因は、焔神だったのか。
家の中の様子は見えないけれど、想像ができた…というよりも、思い出したのだ。
熱くて、息ができない。苦しい。助けて。
ー逃げて。
息ができなくなった。思い切り息を吸うと夢から覚めた。
がばりと上半身を起こし、見知った部屋に心底安堵した。はぁはぁと肩が上下に揺れる。全身に汗をかいている。めまいがする。苦しい。
それに喉が痛い。夢の中でしか叫んでいないと思っていたが、寝ている間に叫んでいたらしい。喉の痛みを和らげるためにキッチンの水を飲んだ。なんだかとても苦く感じた。