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夜が更けて、涼ちゃんの熱はさらに上がっていった。顔は赤く、汗で前髪が肌に張りつく。

意識は朦朧とし、呼吸も浅くなっている。

起き上がろうとすると世界がぐらっと揺れて、

身体は重く鉛のようだった。


「涼ちゃん、もう我慢しないで……」

𓏸𓏸は、病院から渡されていた簡易の点滴セットを机の上に広げていた。


慣れない手つきで針とチューブを確認し、消毒用アルコールをさっと涼ちゃんの腕に塗る。

𓏸𓏸の指は少し震えていた。怖かったし、何よりも失敗が許されないことが分かっていたから。


「ごめんね、ちょっとだけ我慢して……」


ゆっくりと針を刺し、点滴の液が静かに涼ちゃんの腕へと流れ込む。

針を刺された瞬間、涼ちゃんは小さく顔をしかめて、

うっすらと涙を浮かべた。


その顔は顔色が悪く赤みと青白さが入り混じり、

目の下には大きな隈ができていた。

脈は速く、手足は妙に冷たくて細かく震えていた。


点滴が少しずつ身体に入っていく間、

涼ちゃんの呼吸は苦しそうに上下し続ける。

頭が割れるように痛くて、意識も何度も遠のきそうになる。


「もう少し、だから……」

𓏸𓏸は何度もそう声をかけながら、

小さなノートに新しい記録を書き足していった。


【7/21 23:40 体温39.2℃ 点滴200ml開始 顔色蒼白+赤み 意識やや朦朧】

【嘔吐なし、発汗多め、脈早い 冷感あり】


途中、点滴の流れを確かめたり、涼ちゃんの様子を見ては一喜一憂した。

ほんの少し唇が潤うと𓏸𓏸はほっとしたが、涼ちゃんはほとんど反応を示さなかった。


――自分の手が、頼りないほど弱々しいことを誰より𓏸𓏸が一番知っていた。


それでも𓏸𓏸は、最後まで震える手で涼ちゃんを看病し続けた。



君の笑顔をもう一度

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