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季節は巡り、秋晴れの爽やかな日曜日。寿司子は、めったに訪れない渋谷の街に降り立った。
今日は特別な日――初めてのお笑いライブ出演の日である。
出演者は若手芸人が中心だが、他事務所との合同開催。イナリズシにとっては、宇津久芸能の看板を背負っての大舞台だった。
しかし、そんな寿司子に大いなる災いが襲いかかる……
「……人、多っ!」
スクランブル交差点の波に飲まれ、どこがどこだかさっぱりわからない。
スマホを見ても、地図の矢印はぐるぐる回るばかり。気づけば同じビルの前を三周していた。
「ここ、デジャヴじゃない……? 私、一生出られないのでは……」
不安が頂点に達したとき、寿司子は思わずリコに電話する。
『もしもし?リコ?……ごめん、私、今……渋谷に取り込まれてる……』
「なんやそれ!?渋谷は異世界ちゃうわ!」
電話の向こうでリコが笑いながらツッコむ。
数分後、リコが人混みをかき分けてやってきた。
「もう、しゃあないなぁ。東京モンが大阪人に渋谷案内されるってなんやぁ!?ほら、ウチについてきぃ」
そう言って、自然に寿司子の手を取る。
寿司子は真っ赤になりながら、小さな声でつぶやいた。
「……ありがとう。なんか、今日の渋谷、ネタになりそう」
リコは笑って、いつもの調子でツッコむ。
「アンタ、迷子もネタにすんのかい!ほら、もう遅刻寸前や…行くで!」
二人は人混みを抜け、手を繋ぎながらライブ会場へと駆け出した。
続く