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見知らぬ世界。
太陽も月もなく、空にはどす黒い雲しか存在しない。
「STOP」とかかれた赤い看板が周りにたっていて、それはセインを太陽の代わりに見ているようだっあ。
セイン「ここは一体…」
混乱するセイン。
永遠と続く道路をただ一向風の導きのまま歩く。
車の通る気配は感じられない。
道路以外は砂漠のようだった。
セイン「…不自然だ。まるで、現実世界にいないような感じ…。」
セインは汗をダラダラ流しながらずっと歩く。
記憶を辿って、自分が今何処にいるのか考えた。
セイン「そうだ、オレはさっきまで帰ろうとしてて、それで…エレノアみたいな光を見つけたんだ。その光を追いかけた後から記憶がない。」
エレノアのような光。
“もういないはずの光を、何故彼は再び見ることが出来たのか”。
その瞬間、あの時見た白い光を見つけた。
それも正にエレノアのようだった。
セインはまた思わず追いかける。
風はセインが追いかける光とは逆方向を吹いた。
まるで、何かを訴えているように。
セイン「エレノア!!!」
また目がチカチカし始めた。
意識がある朦朧とする。
一瞬だけ、頭に赤い彼岸花が思い浮かんだ。
その時、見覚えのある扉が出現し、あの光はその扉を開いて入っていった。
セイン「…!」
その扉は、“エレノアと初めて再開した、思い出のカフェの扉”だった。
その扉は静かに閉まろうとしていた。
その扉の向こう側には同じような道路が続いていたが、今いる道路の道とは違う点が多く、廃墟に囲まれていた。
扉が閉まる前にセインは急いでドアノブを触った。
風は必死になっているようにセインが飛ばされる勢いで吹いた。
しかしそれも束の間。
セインはその扉を潜り抜けた。
振り返るとさっき開いた扉は消えていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「STOP」とかかれた看板は見当たらなくなり、廃墟を縛るような蔦に目が行く。
点滅したライトに青黒い空。
雨は降っていないのに雨音は鳴り響く。
どうやらここは元々都会だったようだ。
セインはさっきの光を必死に探すが、気配も感じられない。
周りを見渡すと、建物の壁が少しづつ崩れ落ちそうになっていた。
“後戻りもできない”。
彼は心の中でエレノアの口癖を唱える。
セインの心の中(『“ごめんね”はもう聞き飽きた』…)
耳を澄ますと泣き声が聞こえた。
エレノアとはまた違う声。
セインはその泣き声を頼りに声がする方へ真っ直ぐ歩く。
さっきまで吹いていた風はもう感じられなくなった。
その泣き声の方へ行くと、4段くらい積み重ねられたライトの付かないバスがあった。
どうやらここがこの廃墟となった都会の真ん中らしい。
静かに響く泣き声は1番上から聞こえてくる。
その影はゆっくりと動く。
そして壊れたバスの出入口からその影は顔を出す。
セイン「女の子だ…。」
黒く長い髪の毛に耳の下から生える“青い角”。
セーラー服の上に青いパーカーを着ている可愛らしい少女。
しかし、足は絆創膏や包帯だらけで、肌は青白かった。
セイン「そこのお嬢ちゃん!危ないよ〜!今助けてあげるから待ってて!!」
…様子が可笑しい。
セインの声に聞く耳を持たないように少女は目を閉じる。
そしておよそ15mにもなる高さから飛び降りようとしている。
セイン「ええええお嬢ちゃん?!」
セインは驚いたが落ちる少女の体を受け止めるために急いで走った。
少女の目からは大粒の涙が出ている。
━━バキッ
セインは運良く少女を横抱きで受け止めた。
体からは骨が折れるような音がしたが、少女は死亡していない。
しかし体から猛烈な焼けるような激痛が走る。
セインは耐えられなくなり少女を抱えたまま地面に倒れてしまった。
セイン「いたたたたたた!!!こ、これは骨折したかもしんない…!!」
少女は申し訳なさそうにセインの方を向く。
謎の少女「ご、御免なさい…!!私が無駄な事をしたから………!」
セイン「だ、大丈夫…君のせいじゃ、ない………いってぇ!」
しかしある事に気がつく。
およそ15mにもなる高さから落下したはずの少女も何か怪我を負っているはずなのに少女は普通に立ち上がる。
セインは激痛を感じながらカルティエの言っていた言葉を思い出す。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
セイン「エレノアの大好きな漫画のここのシーンなんだけどさ、本当に無傷だと思う?」
セインはカフェでエレノアの大好きな漫画をカルティエに見せつける。
そのシーンは、王子様がお城から落下したお姫様をお姫様抱っこで受け止めたシーンだった。
カルティエ「…お前はフィクション世界に現実を押し付けるつもりか?」
セイン「お前の知識確認だよ!」
カルティエはコーヒーを1杯口に運んで真面目に答える。
カルティエ「うーん、この高さからだと…プリンスは骨折、腕、肩、脊椎等の脱臼、内臓損傷、脳震盪を起こす可能性があるし、逆にプリンセスは重度の多発骨折、内臓破裂、または死亡するリスクがある。」
セイン「ひょえー」
カルティエ「聞いて何になるってんだ。」
セイン「エレノアに教えようと思って。」
カルティエ「やめとけ。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
記憶を辿って少女の体をもう一度確認する。
やはり何もなかったようにセインの目を見る。
少女はセインの手を両手で握る。
その時少女の耳の下から生えている角が青く光る。
謎の少女「私を助けてくれた人だから…」
体の激痛が塵のようにするりと消えてゆく。
そして少女はセインの体を起こした。
不思議なことに、何もなかったかのように動かすことができる。
セインは初めて少女の青く美しい瞳を見る。
瞳孔は丸くなく、鋭く線のようだった。
セインはあることに気がついた。
セイン「…悪魔だ。」
降っていない雨の音が2人を囲む。
さっきまでの少女の口の震えは少し収まっていた。
そしてとんがった歯を見せながら声を出す。
にいな「私の名前は…にいなです。」