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銀土です。
土方がかわいそうなところが少しあったりします。それでも見たい人はこの先に進んでください。
薄く目を開けた瞬間、土方は眉をひそめた。天井は見慣れない。光もほとんど差し込まない、湿った空気の漂う薄暗い部屋。畳でも板張りでもない、冷たい床の感触が背中に伝わる。
(……どこだ)
混乱は一瞬。すぐに呼吸を整え、状況を整理する。体は動く。だが扉は重く閉ざされ、窓らしきものも見当たらない。
誰かの足音が近づく。
土方はゆっくりと上体を起こし、音のする方を睨んだ。
軋む音とともに扉が開く。
入ってきたのは――
**坂田銀時**だった。
いつもの気の抜けた顔。片手を着物の中に突っ込み、だらしなく肩を揺らしながら歩いてくる。
「よォ、土方。目ぇ覚めた?」
その声音も、調子も、いつも通り。
だが。
その口元は、どこか楽しげに緩んでいた。
その瞬間、土方は理解した。
(……こいつにやられたのか)
逃げるしかない。
土方は立ち上がり、銀時の横をすり抜けようとする。だが次の瞬間、強い力で腕を掴まれた。
「どこ行く気だよ」
ぐい、と引き戻される。
振り払おうとした刹那、視界が回転した。
背中に衝撃。
――壁。
思いきり叩きつけられ、肺から空気が抜ける。鈍い痛みが後頭部に走った。
「っ……!」
視界が揺れる。音が遠のく。
最後に見えたのは、こちらを覗き込む銀時の顔だった。
どこか、焦ったような――それでいて、歪んだ笑み。
意識は闇に沈んだ。
次に目を開けた時、見えた景色は昨日と同じだった。
薄暗い天井。閉ざされた空間。
だが一つだけ違う。
両手首と足首に、厳重な拘束。
動こうとすれば金具が鳴る。
「……チッ」
舌打ちをしたところで、また足音がした。
扉が開く。
銀時が入ってくる。
昨日と同じように、近づいてくる。
土方の胸の奥に、得体の知れない感情が広がる。
怒りか。焦りか。
いや――
恐怖。
自分がそんなものを抱くなど、思いもしなかった。
咄嗟に足を振り上げ、銀時の腹を蹴る。
「っ!」
予想外だったのか、銀時は一歩よろめいた。
その目が、見開かれる。
次の瞬間。
その表情が、すっと変わった。
怒り。
いや、それよりももっと切羽詰まった色。
「……なんで分かってくれねぇんだよ」
低く、押し殺した声。
「俺はただ、お前の事が好きなだけなのに……」
土方は息を呑む。
一瞬、言葉を失った。
だが、やがて眉間に皺を寄せる。
「……やり方が」
静かに言う。
「何か他に、、俺に好意を抱いていたのなら、他のやり方があったんじゃねぇのか?」
正論だった。
銀時の喉が詰まる。
何かを言い返そうと口を開くが、声にならない。
拳を握り締め、歯を食いしばる。
悔しさか、焦燥か。
ぐしゃりと前髪を掴み、乱暴に背を向けた。
「……っ」
何も言えないまま、扉へ向かう。
そして振り返らずに出ていった。
重い扉が閉まる音が、部屋に響く。
静寂。
残された土方は、天井を見上げたまま、ゆっくりと息を吐いた。
(……馬鹿が)
怒りとも、戸惑いともつかない感情が胸に残る。
だがそれ以上に。
あの銀時の顔が、頭から離れなかった。