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一週間後。
「すまない君……起きて……」
まだあどけないすまないの手を握ってそう呼びかけるエウリ。外の木々は色付いた葉をとうすっかり散らしてしまっている。すまないが来た頃は紅葉狩りにぴったりの絶景であったというのに。
「お願いだから……起きてよ……!」
決闘があった日。家に着いた後。
『紅葉がとても綺麗よ。目が覚めたら静養も兼ねて紅葉狩りなんてどうかしら?』
窓の外には美しい紅葉が広がっていた。
『外に出るのが辛くてもこの部屋からなら室内でも紅葉狩りが出来るわね』
冗談めかしてそう言っていた。
それなのに。紅葉が散ってもすまないは一向に目を覚まさない。
「……どうして起きないの……?」
エウリはそっと立ち上がる。
「ちょっと出掛けてくるわね」
エウリは部屋を出た。ずっと部屋に居ると気が滅入ってしまいそうだった。
(花でも摘みに行こうかしら?)
ヘビの国から少し離れた所に“みずほの国”という自然豊かな美しい村がある。そこに行く事にした。その時のエウリは知る由も無かったが、そこは蛇一族にとっては敵地も同然、そしてMr.すまないの故郷でもあった。
みずほの国にて。
「……すごく綺麗な花が沢山だわ……来て良かった」
エウリは綺麗な花を摘みながら楽しそうにスキップしている。
(あら……?)
視界の端に美しい水色が映った。そちらを向くととても美しく儚げな水色の花が風に揺れていた。
(……とても綺麗……嫌いじゃなかったらすまない君にあげよう!)
サァァァ……
ふと霞むほど遠くにひとつの小さな影が見えた。とても遠くに居るはずなのにその“青い目”だけは、ヤケにはっきりと見えた____気がした。
ヘビの国。エウリ宅にて。
「……ぅ……ん……?」
すまないが薄らと目を覚ました。しかしまた目を閉じてしまう。実はずっとこの調子なのだ。エウリは目を覚ましていないと思っているらしいが、2日ほど前から薄ら起きたり、うとうと微睡んだり。そんなのを繰り返している。エウリは気付いていないが。起きている時間はほんの数秒から数分なので当然と言えば当然であるが。
ガチャ……
「ただいま、すまない君」
その言葉にすまないは少しだけ目を開ける。それにエウリは気付いたようだ。
「すまない君!起きたんだね!良かったぁ……」
エウリの方をぼんやりと見つめるすまない。まだ眠いのかぼーっとしているが、眠り続けていた時より少し顔色が良くなっているような気がした。
(……顔色も少し良くなってる……でもまだ貧血気味ね)
エウリはすまないの傍に立つ。
「まずは起きて良かった。これは本心よ。でもね……」
そこでエウリは言葉を切り手を振り上げた。
「……ッ……」