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「このゲーム面白そう!」
僕はロビーで飛び跳ねながら言った。
タイトルは有名なアクションアドベンチャーゲーム。
剣あり。
ジャンプあり。
ボス戦あり。
難易度は少し高め。
「お前こういうの得意なのか?」
シクサーが聞く。
「まあね」
僕は自信満々にサムズアップした。
⸻
開始三十秒後。
「あ」
足を踏み外した。
落下。
死亡。
⸻
開始一分後。
「あっ」
トラップに突撃。
死亡。
⸻
開始二分後。
「待ってこれ何」
爆発。
死亡。
⸻
開始三分後。
シクサーが静かに言った。
「お前さ」
「うん」
「どうやって今まで生きてきたんだ」
「愛嬌?」
「知らねえよ」
⸻
それでも僕は頑張った。
頑張ったのだ。
本当に。
ただ。
結果が伴わなかっただけで。
⸻
「よし、今度こそ!」
ジャンプ。
足場成功。
次の足場。
成功。
その次。
成功。
「見た!? 成長した!」
「普通なんだよそれは」
「褒めてよ!」
「褒める要素どこだよ」
⸻
僕は調子に乗った。
そして。
ありえない方向へ飛んだ。
誰もいない空間へ。
まるで吸い込まれるように。
「え?」
僕自身が一番驚いた。
「なんでそっち行くんだよ!!」
シクサーの叫びが響く。
僕は谷底へ落ちていった。
死亡。
⸻
リスポーン地点。
シクサーは頭を抱えていた。
「お前ジャンプボタン押したよな?」
「押した」
「前入力したよな?」
「した」
「なんで右後ろに飛んだ?」
「わかんない」
「俺もわかんねえよ!!」
⸻
周囲のプレイヤーたちも見ていた。
「逆に才能あるな」
「どうやったんだ今の」
「再現できない」
僕もちょっとそう思う。
⸻
そして問題のステージ。
超巨大の溶岩地帯。
落ちたら即死。
難所で有名な場所だった。
僕は慎重に進む。
慎重に。
慎重に。
慎重に――
「あっ」
落ちた。
⸻
「お前ぇぇぇぇぇ!!」
シクサーの絶叫がマップ全体に響いた。
⸻
数秒後。
リスポーンした僕の前にシクサーが立つ。
無言。
怖い。
ものすごく怖い。
「シクサー?」
「来い」
「え?」
「来い」
⸻
次の瞬間。
僕の視界がぐるりと回った。
「うわっ!?」
身体が浮く。
気付けば。
シクサーの腕の中だった。
いわゆる。
キャリー状態。
⸻
「し、シクサー!?」
「もう知らん」
「えっ」
「お前歩くな」
「ひどい!」
「歩くと死ぬだろ!」
「反論できない!」
⸻
そのまま。
シクサーは僕を抱えたまま進み始めた。
ジャンプ。
壁走り。
回避。
敵撃破。
ボス撃破。
全部。
一人で。
⸻
「すごい……」
「黙ってろ」
「かっこいい……」
「黙れ」
耳が赤い。
帽子の下まで赤い。
見逃さなかった。
⸻
「シクサー照れてる?」
「落とすぞ」
「ごめんなさい」
即謝罪した。
命は大事。
⸻
その後も介護は続いた。
難しいジャンプ。
キャリー。
敵の群れ。
キャリー。
崖。
キャリー。
ボス。
キャリー。
⸻
気付けば。
僕はほぼ何もしていなかった。
⸻
エンディング到達。
クリア画面。
僕は感動した。
「やったー!!」
「疲れた……」
シクサーはベンチに座り込んだ。
いつもの何倍も疲れた顔をしている。
⸻
「ありがとう!」
僕は隣に座る。
「助かった!」
「次からは練習しろ」
「頑張る!」
「絶対しない顔だな」
「するよ!」
「しない」
「する!」
「しない」
⸻
しばらく言い合ったあと。
僕はふと聞いた。
「でもさ」
「なんだ」
「途中で見捨ててもよかったのに」
シクサーは少し黙った。
それから視線を逸らす。
「……友達だろ」
「え?」
「置いてくわけねえだろ」
⸻
僕は一瞬言葉を失った。
心臓が変な音を立てる。
なんだそれ。
ずるい。
⸻
「シクサー」
「なんだ」
「好き」
「は?」
「友達として!」
「お前今絶対付け足しただろ」
「付け足してないよ!」
「付け足した」
「付け足したかも」
「おい」
⸻
そんな僕たちを見ていた通りすがりのプレイヤーが一言。
「お前ら本当に付き合ってないの?」
⸻
「違う!!」
「違う!!」
また綺麗にハモった。
そして周囲から、
「いや絶対付き合ってるだろ」
という視線を浴びることになるのだった。