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翌日、朝日が部屋の中を暖かく照らしている。
ここは診療所の奥にある住居スペース。つまりセレスの家。病床が無いため余っている部屋を簡易的な病室として整え、リヒトを入院させてる。
そこにコンコンというノックの音がが響いた。
「失礼します。リヒトさん、入ってもよろしいですか?」
セレスの声だ。リヒトが「大丈夫〜」と返事を返すと扉が開きセレスが入ってくる。
「リヒトさん、おはようございます。」そう言いながらセレスは視線を床へ落とす。リヒトが床に座り込んでいるからだ。
「何しているんですか?」
「筋トレ!毎日の日課なんだ。」
元気よく答えるリヒト。さっきまで腹筋をしていたようだ。セレスはため息をひとつついた。
「リヒトさん、入院中ですよ?体を休めてください。」
リヒトは「あっ……」忘れてたと表情。
「そうだった…ごめん」
セレスは優しい表情でリヒトに目線を合わせるようにしゃがむ。
「謝らなくて大丈夫ですよ。ただ、このまま休まず無理をしては本当に倒れてしまいますよ。」
「それは…困る…」リヒトは力無く答えた。
「ではまずは休む事をしましょう。目標があって旅をしているのでしょう?」
少し驚いた顔をした。
「なんでそれを…」
セレスは穏やかな表情で話しを続ける。
「筋肉疲労が足に集中していましたし、靴底の減りが異常でした。長時間歩いている証拠です。」
セレスはリヒトの顔を覗き込み微笑む。
「それに、入院している事を忘れ、無意識にトレーニングをしていました。努力することが日課になっているんですね。」
セレスはリヒトの手を取り優しく撫でる。
「毎日コツコツと努力する人は、どうしても掴み取りたい、諦められない、そんな目標があるものですよ。」
リヒトはセレス自分の手見つめて悲哀に満ちたような表情で言う。
「……オレ、魔力が弱くて、あんまり魔法が使えないんだ。だけど、どうしても大魔法師になって見返したい人がいるんだ。だから…」
「だったら尚更、一度休みましょう。休むことは止まることではありません。むしろ休むことは次に頑張るために必要不可欠なことですよ。」
少し沈黙が続いたがやがてリヒトは頷いて言った。
「わかった…休む」
その返事に、セレスはほっとしたように微笑んだ。
「ふふ、休む気になってくれてよかったです。
では、朝ごはんにしましょう。」
「えっ!ごはん!」
リヒトの顔が一気にぱぁっと明るくなる。
「はい、ご飯です。焼きたてのパンとベーコンエッグ、サラダ、暖かいスープを用意していますよ。」
「本当に⁉︎やった!」
リヒトは今にも飛び上がりそうな勢いで立ち上がる。と、ふらっとよろける。
「ぁ…」
すかさずセレスの腕が伸びてきてリヒトを支える。
「ぉっと、危ない。急がなくても誰も取らないですよ。」
「ははは。ありがとう!」
リヒトは満面の笑みでセレスとリビングへ向かった。