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その日の研修も、華にとっては失敗の連続だった。
客室清掃ではシーツを裏返しに掛けてしまい、レストランの接客練習ではトレーを落として皿を割り、律に「危ない」と声を荒げられる。
「桜坂さん、もっと落ち着いてください」
「……はい。申し訳ございません」
律の叱責は冷たいわけではないが、距離を置くような響きがあった。
ふと、先ほどのことが胸に残る。
――柊木先輩と話していたときの律の笑顔。
今の自分には向けられない表情を思い出すたび、心の奥に小さなざわめきが広がっていった。