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昼の休憩時間、バックオフィスの片隅で華は水を飲みながら大きく息をついた。
初日からの失敗続きに、胸の奥が重くなる。
そのとき、机に広げられた資料に目が留まった。びっしりと書き込まれたメモ、手書きのチェックリスト。どれも律の字だ。
「……これ、律さんのですか?」
声をかけると、律は資料を手に取り、軽くうなずいた。
「はい。アルバイトの頃からずっと書いてます。自分で覚えないと、すぐに忘れるので」
簡潔な答えだったが、その言葉には積み重ねてきた時間の重みがあった。
華は思わず黙り込む。
今まで“教育係”としか見ていなかった彼の姿が、少しだけ違って見えた。