午後4時45分職員室の空気は、部活動の事務処理でそこそこざわついていた。
Wは、自分の机に座りながらプリント整理をしている。
何気なく横を見ると、Dが自分の椅子をキュッと近づけてきていた。
「……なんでそんなに近いんだよ、お前」
「そう?? 俺の席とWせんせの席、もともと隣でしょ??」
「限度があるだろ。肩、触れてんだよッ!……離れろ」
「やだ」
即答。
しかもDはニヤッと笑いながら、プリントの端を指でトントン叩きはじめる。そして小声で囁いた。
「ねぇW、耳貸して??ちょっと言いたいことある」
「……は?いや今はマジでやめとけ、先生たち後ろ通って───」
Wの抗議は届かず、Dが突然耳たぶを軽く咬んだ。
「ッ……ば、ばかッ! なにしてんだお前!!」
「小声で怒るのめっちゃ可愛い……先生って感じしないわ」
「殺すぞ……ッ!!」
Wの顔は一瞬で真っ赤。
しかも、気づけば近くの先生が二人、こっちに歩いてきている。ヤバい。
「なあD、ちょっと資料室のアレ持ってきてくれよ。今すぐほら、早く行け」
「へいへい、デートの誘いですか?」
「殺すぞッ!!」
Dはニヤついたまま席を立ち、のんびりと出ていった。
Wはその背中を睨みながら、自分の耳を手で押さえる。
(……ちょっとだけ、うれしいと思ったのがムカつくッ)
さっきの一瞬で心臓が跳ねて、手が震えて完全に教師の顔ができなくなっていた。
数分後
Dが資料を片手に戻ってきたとき、Wはしれっと視線も合わさずプリント整理を続けていた。
だが、その耳はまだ、ほんのり赤かった。
「ねえ、あとで準備室来る?」
「行かねぇわ」
「じゃあ、俺が行く。……今日の分まだ甘やかしてないし??」
「……ッ////……知らねえよッ///……勝手にしろッ///」
プリントの束の向こうで、Dはニッコリ笑った。
(なにこの教師カップル……全然隠れてない)
……と、生徒にバレる日もそう遠くないかもしれない。
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