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夕刻が迫るとサンセットを見ようとデッキに人が集まり出して、私たちも海にゆっくりと沈んでいく夕陽を寄り添って眺めた。
波間に鮮やかに揺らぐオレンジ色の帯を残して日が暮れると、宵闇とともに少し風が出てきて、
「そろそろディナーの用意をしましょうか」
と、彼女の肩にジャケットを着せ掛けて、船内へと戻った。
「用意って、何をですか?」
尋ねる彼女の手を引いて、船の中にあるブティックを訪れた。
そこはディナーに合うドレスなどをレンタルできる場で、他にも何組かが服を選んでいた。
「君のドレスは、私が見繕ってもいいですか?」
「ドレスなんて、私……」
店内に吊るされている華やかなドレスに、気圧されるように彼女が目を伏せる。
「それと、君にひとつお願いをしたいことがあるのですが」戸惑う彼女の肩をそっと引き寄せて、「私の服を、選んでもらえますか?」俯いた顔へ問い掛けた。
「……一臣さんの服を?」「ええ」と頷いて、「お願いできますか?」と、改めて尋ねた。
「……はい」と、答えた彼女の頬にキスを送って、「では、また後で。君のドレス姿を楽しみにしているので」と、背中を押し出した──。