お互いの服を選んで持ち寄ってみると、
彼女は、シルバーの色味がかった光沢のあるぺールグリーンのタキシードの上下を、
私の方は、艶のあるシルク地のパールグリーンのイブニングドレスを選んでいて、
色合いが知らずに重なったことに、思わず顔を見合わせた。
彼女のドレスは腰から下がスレンダーにすぼまり、裾に薄いオーガンジーを幾層にも重ね合わせたマーメイドタイプのデザインになっていて、きっとよく合うに違いないと感じた。
タキシードに着替えると、ヘアメイクのスタッフが、「髪を上げられてみませんか?」と提案をしてきて、たまにはそれもいいかもしれないと髪型を任せた。
いつもは横分けにしている髪がオールバックに上げられて、ワックスで固められると、
鏡に映った見慣れない顔が、まるで自分ではないようにも感じられた。
「とてもお似合いです」
鏡越しに言うスタッフに、「ありがとう」と応えて、彼女が来るのを待った。
ドレスを着て髪をアップにし、華やかにメイクをして現れた彼女に、目を見張った。
「……美しいですね」
その姿に魅了されていると、
「先生も、かっこ良くて……オールバックの髪型、とっても素敵です」
微笑んで返されて、自分自身も照れてしまいそうで、「そうですか…」とだけ返した。
照れ隠しに彼女の手を取り、「……行きましょうか」と、腕を組んでディナーへと誘った。
ホールへ行くと、ステージでは少人数のオーケストラが生演奏の準備を始めていた──。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!