初めはそんなつもりじゃなかった。
唯の友達だった。
学校に来ない彼を玄関まで迎える。
彼はいつもため息をついて、「行かない」と言う。
彼は音楽に夢中だった。
音楽に打ち込む彼はとても輝いて見えた。
そんな彼に俺は付いていく。
唯彼の音楽に惹かれ、付いていくためにギターに打ち込んだ。
彼が、笑顔を向けてくる度に頑張れた。
彼が、褒めてくれる度に嬉しくて嬉しくて、また努力できた。
努力すればするほど、彼は笑ってくれる。褒めてくれる。それが生き甲斐かのように、俺は彼に付いていった。
いつからだろうか。
彼の笑顔は、他の人にも向けられる。
その度に、心は焼けつくような嫉妬に支配された。
俺しか知らなかった彼の魅力が露わになる。
それに、嫌悪の情を抱いた。
彼が笑顔でこちらに向かってくる。
その度に、春情を催した。
あぁ間違いない。俺は彼に恋をしているのだ。
その向けられる笑顔を自分だけものにしたい。
俺だけを見てほしい。
こんな感情、彼にはとても見せられないと自分でも理解している。
見せてしまったらきっと、いや確実に嫌われてしまうだろう。長年の友情を壊したくはない。
それなら、想いを押し殺した方がマシだと思った。
彼の手を掴みそうな自分の掌をきつく握り締めて、いつものように演じる。
幼馴染のギタリスト「若井滉斗」として。
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