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ダンジョン攻略試験の結果発表を受けて、シンカ=アクアマリンがイチャモンをつけて、襲いかかってきた。

もちろん返り討ちにしてやった。


彼は実力確かな少年だ。

しかし今回は、相手が悪い。

なにせ、余は魔王なのだからな。

世界で最も強い者を相手にすれば、いかに”流水の勇者”といえども勝てる道理はない。

今は、彼を背負って保健室に向かっているところだ。


「ふふっ。でも、ちょっと楽しそうですね。陛下は」


イリスがそんなことを言ってくる。


「ん? まあ、楽しいと言えば、楽しいが」


「やっぱり。少しだけですけど、昔の殿下に似ていますもの。猪突猛進なところが」


「……余はあんな感じではなかったと思うのだが?」


「ええ。確かに、あれよりは少し慎重で思慮深くいらっしゃいましたが……。でも本質は同じです。負けず嫌いで、まっすぐで。目的のためには手段を選ばない。そういう方でした」


「むぅ。褒められている気がせんな」


「ふふっ。これは失礼しました」


クスクス笑うイリス。


「ふん。昔の余と似ているかはさておき、このシンカはきちんと鍛えれば強くなる」


「そうですね。精神は未熟ですが、まだ高校一年生ですしね」


「立派に育てば、将来的に余の配下としてやってもいい。なかなかの美男子だし、魔王城でもモテるだろうな」


「あら、そうなんでしょうか。ならますます、私の教育が必要になりそうですね。ふふふふふふふふふふふふふ…………」


「……なんか怖いぞ、お前。本当に余の忠実な従者なのか?」


「もちろんですよ、陛下♪」


……どうにも信用できなくなってきた余であった。

そんな会話をしている間にも、足は進めている。


「む。ここが保健室か」


「はい。入りましょう」


イリスが保健室のドアを開ける。

余はシンカを抱えたまま、部屋の中に入る。


「ふむ? 保健室の先生は不在か」


部屋の中にはだれもいない。

職員会議かなにかか。

あるいは昼寝でもしてサボっているのか。

余が本気で魔力探知を行えば探し出せるだろうが、そこまでする必要もないだろう。


「とりあえず、シンカさんをそっと下ろしてあげてください」


「うむ。そうだな」


言われた通り、そっとシンカをベッドに横たえる。


「さすがは陛下。お優しいのですね」


「別に優しくなどない。ただ、余のせいで気絶をした者を放置するわけにはいくまい?」


「ふふ。そうですか……」


(やはり、この方は本質的にとてもお優しいのですよね……。だからこそ、10年前のあの日、私を救ってくれたのでしょうから)


「ん? 何か言ったか? イリス」


「いいえ。なんでもありませんよ、陛下。それより、彼の容態を診ませんか」


「ああ、それもそうだな」


余とイリスはシンカの傍に立つ。


「さあ、早く起きろ」


余はシンカの頬をペチペチ叩く。


「うっ……」


すると、しばらくして彼が目を覚ました。


「ここは……」


シンカが上半身を起こす。

その顔色は悪くなかった。


「目が覚めたようだな。具合はどうだ?」


「……僕はいったい……?」


「覚えていないのか? お前は余と戦って負けたのだ。それで、気絶した」


「気絶だと?」


「ああ。そこで、余たちがお前を保健室まで運んでやったということだ」


「……そういえば、戦いで負けた記憶がある。……っ!!!」


シンカが突然、胸のあたりを押さえる。


「大丈夫ですか?」


イリスが心配気な顔でそう言う。


「痛むか? 肋骨が折れているのかもしれんしな」


「わたしの回復魔法が不十分でしたか。体全体を覆うように発動したので、局所的な回復はできていなかったかもしれません」


「そうか。では、今度は余が掛けてやろう」


「ありがとう。よろしく頼むよ」


シンカがそう礼を言う。

そもそも傷つけたのは余なので、マッチポンプだが。

気にしないことにしよう。

余は、シンカの服に手をかける。


「って、ちょっと!? 何を……」


「回復魔法は、患部に触れて発動した方が効力が増すことを知らぬのか? 勉強不足だな」


「あ……、そういうことか……、じゃなくて! 自分でできるから!」


「遠慮をするな。余は回復魔法も極めておる。骨折を治す程度、造作もない」


「……い、いや……、それはそうなんだけれど。せめてイリスさんに……」


「わたしですか? もちろんそれでもいいですけど。せっかく陛下が直々に治してくださるのです。またとない機会に感謝して、お受けしなさい」


「そういうことだ。では、いくぞ」


「ちょっ……」


シンカはまだ何か言いたそうにしていたが、余は無視する。

シンカの服を捲りあげ、肋骨のあたりを露出させる。


「……ん?」


余は違和感を覚えた。

そこにあるはずのないものが、ある。

胸のあたりに膨らみが。

そして、その先端にはツンと尖ったきれいなピンク色の物体が。


「……これは、なんだ?」


余はそれを指先でつつきながら、首を傾げる。


「…………」


「…………」


「…………」


三人の間に沈黙が流れる。


「………………………。へ、陛下……、まさかとは思いますが……」


イリスが恐る恐るといった様子で言う。


「……」


余は無言のまま、シンカを見つめた。

シンカの顔色はみるみると赤くなっていく。


「シンカよ。お前、女だったのか!?」


「きゃ」


「きゃ?」


「きゃああああああっ!!!」


シンカが悲鳴を上げた。

彼改め彼女が手で胸を隠す。

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