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読んだよ〜〜!!😭💕💕 第1話からもう尊すぎて心臓もたないんだけど!? すちくんの「緊張してます感」すごく伝わってきたし、みことくんが「おにいちゃん!」って全力で懐いてくる展開に一瞬でノックアウトされた🌸 学校で余っちゃった話、すごくリアルで胸がきゅーっとなった… でも「好きだけど」ってさらっと言うすちくんマジかっこいいんだが!?😭💫 雷の夜に一緒に寝る流れも、もう反則級の尊さよ… 2人の距離が縮まるのが一歩一歩丁寧に描かれてて、春の優しい雰囲気にぴったりだなって思った!✨ 次話、絶対読みたい!!yaeさん更新が楽しみすぎるよ〜🌸
春の雨が、玄関のタイルを薄く濡らしていた。
段ボール箱が積み上がったリビングの隅で、すちはそわそわと落ち着きなく指をいじっていた。
新しい家。新しい生活。
そして、今日から“弟”になるらしい子。
「すち、そんな緊張しなくても大丈夫だって」
母親に笑われても、心臓はうるさいままだった。
高校二年生。友達付き合いは普通にできる。
後輩ともそこそこ喋れる。
けれど、“小学生”とどう接したらいいのかなんて、全然わからない。
そのとき、玄関の扉が開いた。
「ただいまー」
知らない男性の声と、ぱたぱたした軽い足音。
すちは反射的に背筋を伸ばした。
廊下の向こうから、小さな影が顔を覗かせる。
ふわふわした髪。ぱっちりした目。まだ子ども特有の丸い頬。
男の子は、ぱちぱち瞬きをしたあと、すちを見上げた。
「……おにいちゃん?」
思ったよりずっと幼い声だった。
すちは一瞬詰まりながら、ぎこちなく返す。
「え、あ、うん……たぶん」
すると男の子の顔が、ぱあっと花火みたいに明るくなった。
「ほんと!? おにいちゃん!? ぼく、みこと!」
勢いよく駆け寄ってきたみことが、そのまますちの腰にぎゅうっと抱きついた。
「わっ!?」
突然の衝撃に、すちは変な声を漏らす。
小さい。軽い。体温が高い。
みことは嬉しそうに顔を上げた。
「おにいちゃん、かっこいい!」
「え」
「背ぇ高い! すご!」
「いや……普通だけど……」
「ゲームする!? サッカーする!? ぼくね、恐竜も好き!」
マシンガンみたいに話すみことに、すちは目を白黒させる。
でも、不思議だった。
さっきまであった緊張が、少しだけ溶けていく。
みことは本当に、全力で懐いてきた。
猫が新しい毛布に飛び込むみたいに、なんのためらいもなく。
その日から、家の空気は変わっていった。
「おにーちゃーん!」
学校から帰ってきた瞬間、みことの声が響く。
すちはちょうど制服のネクタイを緩めているところだった。
「ただいま」
「おかえりっ!」
みことが勢いよく飛びついてくる。
すちは慌てて受け止めた。
「危ないって」
「えへへ」
笑うみことの頬は、ほんのり赤い。
外を走って帰ってきたのだろう。
ランドセルも放り出したまま、みことはぴったりすちにくっつく。
「今日なにしたの?」
そう聞くと、みことは少しだけ笑顔を曇らせた。
「……算数」
「ん?」
「あと、体育」
「そっか」
言葉が短い。
みことは基本的によく喋る。でも学校の話になると、急に口数が減ることがあった。
最初は気づかなかった。
けれど一緒に暮らしていくうちに、すちは少しずつ理解していく。
みことは、人見知りだった。
学校では上手く話せないらしい。
クラスで浮いているわけではない。でも輪の中心にもいない。
休み時間、ひとりで本を読んでいることが多いのだと、両親が心配そうに話していた。
「……みこと」
「なぁに?」
「今日、おやつあるけど食べる?」
みことの目がきらっと光る。
「たべる!」
単純だな、とすちは思った。
でも、その単純さが愛おしい。
キッチンでプリンを皿に移してやると、みことは椅子によじ登りながら嬉しそうに足を揺らした。
「おにいちゃんって料理できるの?」
「ちょっとだけ」
「すごい!」
「いや、プリン出しただけ」
「でもかっこいい!」
その“かっこいい”が、みことの口癖だった。
宿題を見れば「かっこいい」。
高い棚の荷物を取れば「かっこいい」。
自転車を直せば「かっこいい」。
なんでもないことで、みことは目を輝かせる。
すちは最初、その反応に困っていた。
けれど最近は、悪い気がしなかった。
「おにいちゃん」
「ん?」
「今日、一緒にゲームする?」
「宿題終わったらね」
「やったぁ!」
みことは本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔を見ると、すちは胸の奥がふわっと温かくなるのだった。
ある日。
みことは珍しく、帰ってきても元気がなかった。
「ただいま……」
声が小さい。
ランドセルを置く動きも、なんだか重い。
すちはソファから顔を上げた。
「どうした?」
「……なんでもない」
そう言うくせに、みことは明らかに落ち込んでいた。
夕飯までずっと静かで、好きなハンバーグが出ても元気がない。
そして風呂上がり。
リビングでゲームをしていたすちの袖を、みことがそっと引っ張った。
「……おにいちゃん」
「ん?」
「隣、いい?」
「いいよ」
みことはぴったり隣に座った。
それから、しばらく黙る。
テレビのゲーム音だけが流れる。
やがて、小さな声が落ちた。
「……ぼく、変かな」
すちはコントローラーを置いた。
「なんで?」
「今日ね、グループ作ってって言われて……」
みことは膝をぎゅっと掴む。
「みんな、仲いい子同士で組んじゃって」
声がだんだん小さくなる。
「ぼくだけ余っちゃって……」
胸がちくりとした。
みことは無理に笑おうとしていた。
「先生が入れてくれたけど、なんか……ぼくいると静かになるし……」
小学四年生。
子どもだけど、ちゃんと傷つく年齢だ。
すちは言葉に詰まった。
なんて返すのが正解なのかわからない。
でも。
みことが泣きそうなのだけは嫌だった。
「……みこと」
「ん」
「俺、みことといるの楽しいけど」
みことが顔を上げる。
「え」
「毎日うるさいくらい喋るし、すぐ抱きついてくるし」
「う、うるさい……?」
「でも楽しい」
すちは頭を掻きながら言った。
「みこと、変じゃないよ」
その瞬間。
みことの目がじわっと潤んだ。
「……ほんと?」
「うん」
「おにいちゃん、ぼくのこと好き?」
「好きだけど」
あっさり返すと、みことはぽかんとしたあと、耳まで真っ赤になった。
「え、えへへ……」
照れながら、みことはすちの腕にぎゅっと抱きつく。
「ぼくも、おにいちゃん大好き……」
柔らかい声だった。
すちはその頭をそっと撫でる。
ふわふわの髪が指の間を滑った。
みことは撫でられるのが好きだった。
猫みたいに目を細める。
「……もっと」
「ん?」
「もっと撫でて」
「はいはい」
撫で続けると、みことは次第に力を抜いていった。
学校で頑張って、疲れて、しょんぼりして。
でも家では、こうして甘えてくれる。
そのことが、すちは嬉しかった。
とある休日。
二人で近所の公園へ行った。
みことは朝から大はしゃぎだった。
「おにいちゃん! 鬼ごっこしよ!」
「えぇ……高校生に鬼ごっこさせる?」
「やだ?」
「……ちょっとだけだよ?」
「やったー!」
みことはきゃっきゃ笑いながら走り出す。
風が髪を揺らしていた。
すちはその後ろ姿を眺めながら、小さく笑う。
最初は、本当にどう接したらいいかわからなかった。
けれど今は。
みことが笑うと、自分まで嬉しくなる。
転びそうになれば反射的に手が出る。
帰り道で眠そうに目を擦っていれば、荷物を持ってやりたくなる。
完全に、“兄”になっていた。
「おにいちゃん早くー!」
「はいはい」
追いかけると、みことは楽しそうに逃げる。
小さい背中。
ふわふわ跳ねる髪。
無邪気な笑い声。
それが全部、眩しかった。
しばらく走り回ったあと、ベンチでジュースを飲む。
みことは隣でストローを咥えながら、ぼんやり空を見上げていた。
「……ねぇ、おにいちゃん」
「ん?」
「ぼく、おっきくなったら、おにいちゃんみたいになれるかな」
すちは少し笑う。
「なんで俺?」
「だって優しいもん」
「別に普通」
「ふつうじゃないよ!」
みことは真剣な顔をした。
「ぼくが寂しいとき、ずっと一緒にいてくれる」
その言葉に、すちは少しだけ目を見開く。
みことは続けた。
「学校でいやなことあっても、おうち帰ったらおにいちゃんいるから平気なの」
胸の奥が、じんわり熱くなる。
こんなふうに誰かに必要とされたこと、今まであっただろうか。
みことはジュースを抱えたまま、へにゃっと笑った。
「だから、おにいちゃん大好き」
すちは困ったように笑いながら、みことの頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
「……そういうの、急に言うなよ」
「えへへ」
みことは撫でられながら嬉しそうに目を細めた。
空は青かった。
雲がゆっくり流れていく。
春の匂いがする風の中で、みことが隣にいる。
それだけで、なんだか世界が少し優しくなった気がした。
夜。
みことは自分の部屋で寝るはずだった。
……のだが。
「おにいちゃん」
「なに」
「今日、一緒に寝ちゃだめ?」
すちはベッドの上で固まった。
「え?」
「だって雷鳴ってる……」
外では確かに、低く空が唸っていた。
みことは不安そうに裾を握る。
「……怖い」
その顔を見てしまうと、断れない。
「……今日は特別だよ?」
「ほんと!?」
ぱっと笑顔になる。
みことは嬉しそうにベッドへ潜り込んできた。
小さい体が隣にくっつく。
「あったかい……」
「みこと近いって」
「えへへ」
でも離れない。
むしろ腕に抱きついてくる。
すちは天井を見上げながら、静かに息を吐いた。
弟。
家族。
そういう存在のはずなのに。
みことが笑うたび、抱きついてくるたび、胸の奥が変にきゅうっとなる。
まだそれが何なのか、すちは知らない。
ただ。
この子を泣かせたくない。
寂しそうな顔を見たくない。
笑っていてほしい。
それだけは、はっきりしていた。
「おにいちゃん」
「ん?」
「ぼくね」
みことは眠そうな声で呟く。
「おにいちゃん来てから、おうち帰るの好きになった……」
すちは静かに目を伏せた。
それから、みことの髪をそっと撫でる。
「……そっか」
「うん……」
みことは安心したみたいに、すちの腕に頬を寄せた。
雨音が静かに窓を叩く。
やがて、小さな寝息が聞こえ始めた。
すちはその寝顔を見下ろす。
柔らかそうな頬。
無防備な表情。
手を伸ばせば届く距離。
「……ほんと、懐きすぎ」
小さく苦笑する。
けれど、その声はどこか優しかった。
みことは眠ったまま、無意識にすちの服をきゅっと掴む。
離れないように。
安心するように。
すちはその手をそっと包み込んだ。
春の夜は静かだった。
新しく始まった家族の時間が、ゆっくり、やさしく積み重なっていく。
♡.*・゚———————.*・゚♡
次話更新:♡500⬆