俺の名前は穿湯花《うがちゆか》。
天坂学園中等部の2年生。 特に授業は受けず、常に部室にいる。
「あんたさ〜、少しは授業受けたらど〜お〜?」
学園一のニートの俺に、のほほんとそんなことを言ったこいつは、御影狛《みかげはく》。初等部時代からの幼馴染だ。
俺と違って昔から学年成績は上位で、実力が物を言う中等部からは、クラスメイトに勉強を教えるよう懇願されることもあるらしい。
そしてそれほど、この学園の環境は酷かった。
この学園にはランク制度が存在し、俺はC、狛はB。
そしてCとは、進級・進学や卒業が許可されるギリギリのライン。そういった者たちは、S以上の実力主義者たちにとことん罵られる。
俺は注目されるのが嫌でCにとどまっている。罵られるのは、”目立つので”嫌なのだ。
そんな具合で孤立した俺に、唯一屈託なく接してくれているのが狛である。
「狛ぅ〜」
そう言って俺は、狛に抱きつく。
「ぎゃ!?変態っ!?」
「んむ…眠いぃ…」
そんなこんなで、今日も平穏な一日が終わろうとしていた。
ダッダッダッ…
廊下から聞こえる足音。
誰が歩いているのかは、その音を聞くだけで分かった。
「…瀬斗か」
瓜馬瀬斗《うりませと》は、今年になって部活に入ってきた仲間だ。
しかし俺は、最近の瀬斗の対応に困ってきている。
その理由は…。
「失礼します!!生徒会副会長の瓜馬瀬斗です!…湯花ぁぁぁ!!」
バタッ!!…と部室のドアが勢いよく開かれたと思うと、瀬斗は勢いよく俺の方に向かってきた。
「湯花ァァァァァ!!」
「おっと」
「うわァァァ!!」
こいつはこれでも生徒会副会長。こんな学校の端っこまでくる時間はあるのか、と、疑問に思ったのも束の間。
「グルルルルル…湯花ァァ……」
「んぁ?」
避けて壁に叩きつけたはずの瀬斗が、恐ろしいスピードで立ち上がってきた。
「フーッ、フーッ…」
…ちょっと待て。なんかおかしい。
瀬斗はいつもこんな調子だが、こんな犬っぽかっただろうか。
「瀬斗…?」
「グルルルル」
話しかけてもこの調子。諦めて放っとこうと思ったのだか…
「ワンッッ!!」
「!?」
思わずビックリハテナが出てしまったが、やはりこれは…
「兎花の仕業…だね」
「あぁ…」
兎花…
奴は、過去に何度も同じようなことをしてきた。
今回もそうだろうと、俺と狛は科学同好会に向かうのだった…。
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